新・内海新聞113号

最近温泉旅館事情

 

今回は、地元ネタで失礼します。
湯河原に引っ越して約20年になります。
実家のある神戸六甲山系に風景が似ていることから移り住みました。
それは、北に山があって、南が海。近くに温泉があって、新幹線が走っていて、大都会が近い・・そんな条件で関東の地図を広げると、熱海から小田原のエリアしかなく、その中間地点の湯河原にした記憶があります。
温泉は有馬温泉と箱根が類似、海は瀬戸内海と相模湾が類似、新幹線が走っていて、近くの大都会は大阪と横浜が類似。これが情緒を安定させ精神衛生上良好ということになります。隣町に静岡県熱海市があり、千歳川が県境となっています。
熱海は徳川家ご用達の温泉で、家康がこよなく愛したことから古くから栄えていました。これは以前NHKのブラタモリで詳細を解説していました。
戦後は新婚旅行のメッカと言われました。高度成長の時代には、大型観光バスで乗り付け、旅館の大宴会場で芸者さんを呼んでのドンチャン騒ぎ。街にはバーやスナック、風俗店が並ぶ・・・そんな古典的な温泉街の発展を遂げました。しかし、今は見る影もない。
いまどき、会社から団体旅行なんて流行らない。まず女子社員が嫌がります。
旅館の構造も、大広間があって、そこで皆で一緒に食事。さらに席の順番も会社の序列そのまま。これではさらに嫌がられます。
最近は、会社の保養所もどんどん無くなってきています。格安だからといって会社の保養所に家族旅行に行ったら、上司の家族も来ていて、終日気を遣いっぱなしなどという事態は避けたい。
今のトレンドは、家族旅行やカップルでの静かに旅行です。
中でも温泉は一番の楽しみです。
しかし、大温泉旅館の男湯は大きく立派ですが、女湯は小さく設備も貧弱。これでは女性客が寄り付かないのも当然です。
一方、湯河原温泉は熱海とは対照的です。熱海の様な団体客を相手にした設備があまりありません。
谷川に沿って、小さな旅館が立ち並ぶ温泉街です。土地がなく大きな旅館を立てる余裕がありません。5部屋とか10部屋とかの小さな旅館が点在しています。
かつては島崎藤村や芥川龍之介、川端康成といった文豪が小説を執筆するために籠ったという静かでのどかな旅館街です。旅館のごひいき客も二代目、三代目と代々通い、旅館の当主も二代目、三代目と引き継がれる。代大々顔なじみということです。
しかし、最近はおじいちゃんに連れられて一緒に旅館にやってくる孫たちも退屈な田舎は避け始めています。友人と遊んでいた方が楽しいからです。
結果、どんどん客数は減っています。
特に東京近郊の温泉旅館が地盤沈下しています。
今から20年程前に、練馬から湯河原に引っ越した頃、地元の方々からいろいろ相談を受けました。
とにかく旅館街の活性化策は無いものだろうか?という内容です。
いろいろ聞いていると、面白い事が判ってきました。
まず、営業時間です。
ほとんどの旅館は、14時がチェックインです。
18時から夕食タイム。
食事が終われば20時に布団を敷きに仲居さんがやってきます。
朝7時から朝食タイムで、10時チェックアウト。
こんな流れ作業です。
しかし、この時間割だと二日間連続でお休みのサラリーマンの人以外利用は不可能です。
休みが一日しかない、あるいは分散しているようなサービス業の方々は利用できません。
総務省の労働力調査(平成16年)によると全就業者のうちの67%(4056万人)がサービス業の就業者と発表されています。この全てが、休日が分散しているとは言えないかも知れませんが、かなりの方々が不便を感じている可能性があります。
当時、地元の旅館組合の会合で以下の様なアドバイスをしたことがあります。
当時は、豪華な夕食のために板前を雇い、高価な素材をふんだんに使った、非日常のディナーが用意されていました。

しかし、客数が減少し、板前の人件費を払えなくなってくると、夕食は仕出し業者に外注する事になっていきます。
これでは、せっかく高いお金を払っている値打もありません。結果、どんどん客離れが始まります。そのような現状を聞かされました。
その時、私はもう少し視点を変えたらどうかと思いました。
豪華な食事を本当に求めているのだろうか?旅館に何を期待してやってくるのだろうか?
温泉は必須です。でも旅館での食事よりも、一緒に旅行する人たちとの時間が一番重要なのではないだろうか?・・・そう思いました。
まず、サービス営業時間を再検討する事にしました。
チェックインを従来の14時から22時にします。これでサービス業の方々でも仕事が終わってから出掛けても間に合います。
仕事が終わって、職場の友人たちと東海道新幹線に飛び乗っても大丈夫です。途中で美味しい駅弁とビールを購入。友人たちとの道中のおしゃべりを楽しんでもらいます。
駅に到着してタクシーで旅館に移動。
ゆっくり温泉につかって、リラックス。深夜まで友人たちとの談笑タイムです。
この日の夕食はありません。飲み物やおつまみは、備え付けの自動販売機でいつでも購入可能です。
翌朝は、プチ豪華な朝食が待っています。食事はこの朝食がメインです。
炊きたてのホカホカのご飯、お味噌汁は食べ放題。地元で採れたアジやキンメダイの干物などなどビュッフェのセルフサービスです。
チェックアウトは16時まで可能です。
もう一度、温泉に入ってお昼寝も出来ますし、荷物を預けて周辺の観光地の散策でも楽しめます。
これまでの旅館だと、中に入ってしまうと館内ですべて完結してしまうのですが、ゆったりした時間の中での散策は、周辺の経済活性化にも貢献します。
それぞれの小さな旅館が、朝食を準備するのが大変なのであれば、朝食専門のレストランを、旅館の共同出資でつくることもできます。
これであれば、一日しかない休日でもとても有効な時間配分が可能です。
さて、この様な平日に休みのあるサービス業とはどのようなものでしょうか?
たとえば理髪・美容店。これは月曜日がお休みのところが多いです。レストランや商店などは水曜日や木曜日の休みが多いです。
それぞれに料飲業組合や商店会などの団体が存在します。それぞれの業界の休みを調べ、その休みの前日の夜からチェックイン出来るプランをつくり、チラシやWebで案内していきます。
「飲食業界のお客様向けプラン」とか「百貨店業界のお客様向けプラン」とか仕掛けていきます。
各地域別、業界別でマーケティングを展開し、一週間の、特に日曜の夜から金曜日の夕方までの予約を取ります。土日は通常のお客様がいらっしゃるので、ここは変更なしです。
以上が、20年前に考えて提案したプランでした。しかし、これらはなかなか実行されませんでした。
ところが、最近変化が出てきました。
一泊一食プランというのが出てきました。一泊と朝食だけのコースです。
また、インバウンドの旅行客が増え、素泊まり希望の外国人旅行客が増えた事も上げられるかも知れません。
「The Ryokan Tokyo」というのが出来ました。

 

 

 

 

 

 

一泊朝食付き 3名利用で8000円/人程度
朝食もいろいろ選べるようです。
A.国産一等米の金目米使用 石焼混ぜご飯セット
B.国産一等米の金目米使用 おにぎり朝食セット
C.国産豆乳の汲み上げ湯葉朝食セット
また卒業旅行プランなどは、4名で4000円/人程度
旧態依然とした考え方では、旅館業取り残される時代になってきました。