新・内海新聞104号

フラスコ産業を探せ

【閉塞感の突破法】
営業活動に於いて閉塞感はつきものです。それを分析し手掛かりを掴むのがマーケティングです。マーケティングとは、売り手が買い手に如何に近づくかということです。如何に相手の気持ちや不便を汲み取り、その問題解決をする事と言えます。反面、買い手の気持ちに近づきすぎると、コスト高になり儲からない偏ったものになってしまうというリスクも潜みます。
以前、ブルーオーシャンとかレッドオーシャンとかいう言葉が流行りました。競合が不在で穏やかな状態をブルーオーシャンと呼びます。競合だらけで日夜身を削るような熾烈な戦いを繰り広げる状態のレッドオーシャン。まさに血の海です。誰でもブルーオーシャンを求めますが、そんなところは、そう簡単には見つかりません。多くの市場は既に着手され、新規市場というものはそう簡単に見つからないものです。
「フラスコ産業をさがせ。」という言葉があります。マーケティングでは良く使われる言葉です。この内海新聞でも何度か登場しました。
フラスコとは理科の実験などで使用するガラス製の容器です。フラスコを使用するところは学校や研究所という事になります。しかも、毎年定期的に購入するようなものではなく、破損したりして足りなくなったら購入するというのものです。ちなみに、フラスコ専業メーカーは水戸市にある有限会社タツミ理化という会社です。新たに競合が参入しても赤字になってしまうので、どこも参入してきません。しかも、確実に需要はある。売上はそんなに大きくなくても、市場は無くならない。
つまり、小さくても一番の独占企業なのです。かつてはレッドオーシャンだったものが、儲からないので競合がどんどん撤退し、結果的に一社が独占してしまった、ブルーオーシャンにしてしまった・・・ということになります。残り物には福がある、の様なものです。マーケティングに於いて一番の理想は、その市場を独占してしまうことです。結果的に100%のシェアを持ってしまったと言うことになります。この「小さくても一番」という考え方は重要です。
よく使うたとえですが、ある人が、お花屋さんを開店したいと思ったとします。しかし、街には多くのお花屋さんが既に営業し、顧客もついています。後発でお花屋さんをオープンしても苦戦するのは目に見えています。お客様がこのお店に行こうと思わない限り厳しい経営が待ち構えています。ここで、小さくても一番という考え方で戦略を切り替えたとします。
たとえば、お花屋さんでも赤い花しか扱わないとしたら、店の前を行く人々は「赤いお花屋さん」と呼ぶと思います。そしてさらに赤いバラの花しか扱わないとしたら「赤いバラのお花屋さん」となります。さらにお花は一本では売りません。百本単位の花束でしか売らないとしたら、今度は「赤いバラの花束屋さん」と人々は呼び始めるでしょう。さらに、お店ではお花は売りません。ただ見せるだけです。購入は全てインターネットでの通信販売です。依頼主になり変って、ご指定の住所名でお贈りします。メッセージを添えて。
こうなると、もうただのお花屋さんではありません。親しい人の記念日に贈る、素敵なプレゼント屋さんです。「花の記念日便」といったような、これまでの思考の軸とは変わってきます。
人とは自分の頭の中にある記憶のかけらを軸に物事を比較します。それに比べて良いか悪いか、高いか安いか、美味しいかまずいか・・・などなど物事を直視して判断することはなかなか難しいものです。であればそれを逆用し、わざとその思考に軸を変えてしまうことも方法です。前例でも、最初は街のお花屋さんでしたが、赤いバラの専門店になり、最後は贈答品店に変化しています。しかも市場は全国規模です。ここまで来るとセグメントされた市場は小さくても他になければ一番です。
小田原市東町に回転寿司店があります。ここも小さくても一番を実践して大成功を収めています。以前は町はずれにある普通の回転寿司でした。ところがある日突然、大きく方向転換します。寿司が嫌いな人でも食べに来られる回転寿司にする。生魚が嫌いな人でも来てくれる寿司店にする・・・です。駅から遠く歩いて行くのは大変で、皆車でやってきます。でも、お酒のメニューは半端ないです。ベルギービールは100種類以上、ワイン、日本酒、焼酎などなど無いものは無い程です。みなさん飲めない運転手を連れてきます。もちろん寿司は地元小田原の地魚を中心に豊富です。しかし、それよりもそれ以外のサイドメニューは超豊富です。フレンチ、イタリアン、スペイン料理や割烹料理・・・。イベリコ豚等は一皿三万円以上する高級品を驚くほどの低価格で提供しています。チーズの消費量も日本有数です。チーズの輸入代理店の担当者が、相手が回転寿司の店長だと知ると出荷を渋ったそうです。寿司屋でチーズのメニューなんて有り得ないからです。粘りに粘って取引が始まると取引額はなんと日本一になってしまいました。皆、お寿司は最後の締めで、中心がざまざまな各国の料理を楽しみます。全国から有名店のシェフが確かめに訪れますが、その味や品質の高さに驚きます。やがてそのお店は、形態は回転寿司でも「寿司ビストロ」と呼ぶようになりました。Googleで「変態回転寿司」で検索するとトップに出てきます。
「味わい回転寿司 禅」というのが正しい名称です。一度お近くに行かれたら立ち寄ってみて下さい。小さくても一番というマーケティングの標本のようなお店が存在しています。
税務会計のTKCという会計グループがあります。かつては栃木県計算センターと呼んでいました。いわゆるコンピューター会計の先駆けの様な会社です。しかし、後発の会社がどんどん出現し、コンピューター会計の会社は乱立し、レッドオーシャンとなりました。顧客を取るために価格は下がり、利益を出せなくなり、競合はどんどん撤退していきました。当然マーケットは小さくなっていきます。しかし、最後まで頑張ってやり続けたのがTKCでした。市場は小さくなっても、確かな顧客は存在します。やがて市場は安定し、TKCが大きなシェアを獲得することになります。
ロードサイド紳士服の会社にA社があります。A社の戦略は特殊でした。地方の小さな町を狙って出店を続けていったのです。マーケットは小さいので一店舗の売り上げも大きくありません。しかし、競合が出店してきた場合、市場が小さいので、そこにニ店舗も有ると間違いなく赤字になります。それが怖くて追随して出店出来ません。このように、小さな町で一番店をドンドン増やしてゆき、日本有数の企業に成長しました。これも小さくても一番の一例です。

ジンテックという会社は、電話番号クリーニングの技術と実績に於いては日本有数の専門会社です。そもそも最初は、通販会社の不着郵便物を削減するために、顧客電話番号の確認をおこなって不通番号が郵便不着につながるという事を発見したことからこの事業が始まっています。いまや、通販だけでなく数多くのリテール事業を行っている企業が利用し、リアルタイムで顧客の動向を予測し、与信や顧客維持、更にマーケティングにご利用頂いています。20年以上の実績はこの業界最古参の企業として、小さくても一番を進めるという、これも標本の様な企業と言えます。