新・内海新聞103号

友翁伝 完結編

当社の創業時の大恩人、友近忠至氏の足跡を連載しております。友近氏はキティちゃんで有名なサンリオの創業メンバーのおひとりです。そして当社の元役員であり株主でもありました。いよいよ今回が最終話です。

2004年7月、友近さんの77歳の喜寿のお祝いのパーティーがとあるホテルで行われました。
百数十人の方々が全国から駆けつけました。私も末席でお祝いをさせていただいたのですが、その時に配られた資料に年代ごとに出会った方々のお名前と経歴、年齢が書かれたものがありました。
つまり、縦軸に30歳代、40歳代、50歳代、60歳代、70歳代と5つに分けられ、その横にその年代に出会った方々の名前が記載されていたのです。
普通であれば、上の年齢が若いころに出会った方々の名前が多く書かれ、年齢を重ねるごとに人と出会う機会も減ってゆくので、記載の名前は減っていくはずです。
また年齢が上がると亡くなる方もいてなおさらです。
しかし、友近さんの場合は違いました、年齢を重ねるごとに、出会いが増え、特に70歳台が一番名前の数が多かったのです。しかもその方々のほとんどが20代30代といった親子ほど離れた方々だったのには驚きました。
その時、いつも友近さんがよく話されていた事を思い出しました。
かつて愛媛県松山市に本店を置く明屋書店に勤められていた時、その書店のオーナーである安藤明さんから、いつも言われていた言葉があるそうです。
「見たことはしたことにならない。聞いたことはしたことにならない。言った事はしたことにならない。ただ、したことだけがした事である。」
「お前は偉そうなことばかり言うけれど、本当にそれをしたんか?」
私も友近さんに同じように言われました。
つまり、友近さんの頭脳は耐えずオープンマインドなのです。どんな人の話でも分け隔てなく聞かれます。
そして、その聞いた話を、すぐに行動に移します。勇気のいることだと思います。
自分もすぐに行って確かめるのです。
このオープンマインドさと行動力が、年齢を超え、立場を超え、誰とでも打ち解ける秘訣だと思いました。
しかも、友近さんは若い人たちが大好きです。
彼らは、一杯時間を持っている。この世の中で一番大事なものは金でも地位でも名誉でもない。時間なんや。これがあれば何でもできる。若者にはそれがある。
・・・ということです。

友近さんは、武蔵野工業大学でシステム思考の講義をされていました。そこには10代、20代の学生が沢山講義を聞きに来ていました。その授業を私も何度か参加させていただいたことがありますが、本当に嬉しそうに話をされ、活発に質疑応答に応えられていたのが印象的でした。

友近さんは2014年8月17日に亡くなりました。多くの事を学ばせて頂きました。
2014年7月31日の10時頃、私の携帯に電話がありました。友近さんからです
「内海ちゃん、会いたいねん。」
「判りました、今すぐ行きます。お蕎麦でも食べましょうか。」

私は聖蹟桜ヶ丘にある友近さんのご自宅に向かいました。
到着して、近況報告をして30分ほど経過しました。
「友近さん、お蕎麦、行きましょうか。」
「そやな、行こか。」
「いつもの多摩センターのそば佳にしますか?」
「いや、今日はこの下にある蕎麦屋にしよう。なかなかええ店やで。」
「どうしてそば佳じゃないんですか?」
「最近、多摩センターまで行くのがしんどいねん」
私は鴨南蛮、友近さんは天ぷら蕎麦です。
その時、友近さんは妙な話を始めました。
「今まで、いろんな人に出会ってきた。面白かったなぁ。その中でも特に印象に残る人達がいる。内海ちゃん、あんたはその中の一人に必ず入ってくる人や。これまでよう世話してくれたな。ありがとう。」
「先生、止めて下さいよ。最後の言葉みたいやないですか。」
「そうやな、すまんすまん。」
「ところで、来週の水曜日から八ヶ岳の別荘に涼みにいくんやけど、あんたも一緒にいけへんか?」
「行きたいです。でも仕事が・・・・」
「そやろな、無理せんでええで。」
これが、友近さんとの最後の会話となりました。翌週、八ヶ岳の別荘で倒れ、帰らぬ人となりました。
友近さんから学んだ様々の事を反芻してみました。
①PDCAは間違い。Small do → Check → Plan → Big Doが正しい。とにかくまず行動して検証してから大計画を立てよ。
②システムとは、誰でも何も考えなくとも、同じように結果を出せる仕掛けの事をいう。
③出来の悪い人を、もしも出来が良いようにできたなら組織全体の能力の底上げに繋がる。
④まず小さな数字に着目して考え始めよ。大きな数字から考え始めると、構造が複雑化して経費がかかる。
⑤なんでもプラス思考で考える。
⑥入力至上主義 コンピュータのまず入力からという発想は止めよ。なるべく入力しない発想からスタート。もしも入力するにしてもワンライティング思想(最初の一回だけの入力)で完了する事を考えよ。
⑦権限委譲とは、なんでも任せることではない。統一したマニュアルに従って、間違いが起こらない仕掛けをつくって、それに従う事をいう。
⑧数字の比較は、まずアベレージ(平均値)を基準に考えよ。平均値と比べてどうなのかを見ることで、全て指数化が出来る。