新・内海新聞 87号

TACS誕生秘話(3)

目の前にある障害を乗り越えてこそ希望というものが生まれるのかも知れない。
20数年前、ジンテックは就職専門のテレマーケティング会社でした。
それでも当時は斬新な先端ビジネスでした。

就職活動中の大学生の自宅に電話を掛けて、就職セミナーのご案内をするというのがその内容です。
ただこれだけでは商売になりません。
電話をする大学生が判らないという企業には、大学生名簿を無料で提供し、参加承諾が出れば、学生宛に招待状を郵送し、しかも速達で郵送しました。
会社説明会の前日には、確認の電話を掛けて、説明会の開催日の夜には、感想や次回参加の意思確認を行いました。
更に会社説明会の会場設営、受付、会場案内・・・・などなど。

ここまで付けて、他社との差別化を図りました。
それでも、足りない部分があったのです。
それは、不在学生です。学生が外出で自宅にいないのです。
現在のように携帯電話も無く、留守番電話も無く、不在であれば我々はもうお手上げです。
この影響は他にも及びます。
電話を掛けてみないと不在かどうかは判らないので、一応全員に電話をします。
10回迄電話のベルを鳴らす事にしているのですが、10回なって誰もでなければ不在とします。
ということは、オペレーターは学生が不在の場合、10回の電話の呼び鈴だけを聞いている事になります。これは全くの経費の無駄になります。
この不在学生を早めに発見しなければならない。
こうして社内プロジェクトはスタートしました。自宅不在の学生を見つける方法はないものか?

その頃、私は別件で大東京火災海上保険に訪問していました。
当時、大東京火災海上保険はテレマーケティングでは先進企業で、保険の営業にテレマーケティングを活用していました。
その頃川崎製鉄が販売していた全自動テレマーケティングマシンである「ボイスリンク」を大東京火災も導入していました。
このボイスリンクは、電話をリストに従って電話をしてゆきますが、相手と電話が繋がるまで、順番に電話のベルを鳴らし続けます。
もしも相手が在宅で、受話器を上げれば端末の画面にその相手の情報を映し出し、住所、電話番号、性別などを表示します。
これによって、留守を見極める無駄な時間を排除できます。私も学生相手のテレマで同様の悩みに陥っていたので、願っても無いシステムではありました。
しかし、非常に高額で、そう簡単に導入できるものではありませんでした。大いに悩んだ結果、新たなテレマーケティングシステムを内製化することを決心しました。
ボイスリンクの半分以下の価格で、アップルコンピューターを採用し、感覚で画面操作ができるシステムです。

データーベースサーバーに、全国の大学3年生のデータベースを蓄積し、20台の端末を繋ぎ、それぞれの端末に3本ずつ電話回線を繋ぎます。
そして、3人の大学生に同時に電話発信します。大学生の在宅率は30%なので、電話回線3本のうち一人は繋がる計算になります。
この様にして、留守中の大学生を除外し、効率的に電話を繋いでゆくシステムが完成したのです。
その後、インターネットが普及し、テレマーケティングによる学生動員もダイレクトメールの発送も急にすたれていくことになります。

実は、この時に現在の電話番号クリーニングシステム「TACS」の基礎的な考え方は完成していたと言えます。
学生データベースは、片っぱしから電話を掛けていきます。ただ、在宅かどうかを確認するだけなので、それ以外の情報は不要なのです。
一方TACSは、電話番号が生きているか欠番かを確かめるだけなので、同様に、それ以外の情報は不要です。
そこには、名前も住所も性別も必要なく、電話番号のテキストだけがあれば良いのです。
偶然でしたが、学生テレマーケティングとTACSは何から何まで似ていました。
郵便物の不着をどう減らすのか?それには電話番号の欠番を除外すればいい・・・という発想も意外と早く生まれました。
ちょうどその時、郵政省で郵便代金の大幅値上げが検討されていました。この値上げでダメージを受ける通信販売業界と組んで、郵便不着防止のシステムとして、最初の波を掴みます。
ほとんどの大手の通信販売会社との契約を取り付けます。
この時に気付いたことがあります。いつも連絡が取り合える事こそ重要で、それが信用につながっていく。
企業と顧客も同様で、絶えず連絡が付くようにしてあげる、或いは、現在連絡がつかないのは誰か?が経費安く安易に判るようにする仕事もあるはず。これは大きな気付きでした。
電車の踏切が良い例かも知れません。
踏切を渡ろうとすると、警報のベルが鳴っています。
線路の左右を見ても、まだ電車も何も来ていません。
しばらく待っていると勢いよく列車が通過してゆきます。
我々のTACSは、この踏切の警報機と同じです。
この警報機は、災害を直接防止するものではないかも知れません。しかし、その何か判らない迫りくる非日常の状況を知らせるだけの仕掛けです。
このTACSの警報を目印に、次の大きな与信対策を発動するかの判断をすればよい事になります。
毎回毎回大きな与信対策を稼働していては、莫大なコストと人材が必要になります。
まず小さな対策のTACSを稼働させ、次に備える事が重要であるということを発見したのです。
簡易与信という世界です。
現在この考え方は、金融、通信、証券、流通、等々の分野で利用され、更にニーズは広がりつつあります。