新・内海新聞 63号

ガラパゴス化と「グロパゴス」

いまガラパゴスという言葉が流行っている。

南米の孤島群のことで、大陸から遠く離れていたために独自の進化を遂げた生物が多く、ダーウィンの進化論のきっかけになったところでもある。

このガラパゴスが今、日本に当てはめられて揶揄されている。
日本国内で最適に進化しても世界では認められない商品が多いからである。
つまり、日本国内の独特の規格として成長はしたが、外国では普及していない。

グローバル化時代に、外来種に弱いガラパゴス商品はダメだ。
国際規格に統一しようという意見が多い。

はたしてそうなのだろうか?

私はそうは思わない。ガラパゴス化こそが日本の生きる道といえる。
日本発の商品をみてガラパゴスと言われるが、実はそうではなくて、日本人の思考自体がガラパゴスなのだ。

人口が一億人以上いると、そこは立派なマーケットであり、国内向けの消費で自立生存していけると言われる。
日本もその一つ。それだけで巨大市場なのである。しかも識字率は世界最高クラス。
衣食住に満たされ、戦争もなく、単一言語で高学歴。また歴史的にみても日本は特異であった。

かつてのシルクロードは西から東に向けて伸びて来た。いわば文化の伝承でもあった。
同様にさらにまた東に文化は伝えられピンハネされる。
このピンハネがその国の利益。この繰り返しが行われ、様々な文化は極東の日本に伝わった。

しかし、日本の東にはもう海しかない。ピンハネして伝える国がない。
そこで悔しがっても泣いていても仕方がない。何か考えなくてはならない。
残された方法はただ一つ。日本人向けにカスタマイズして売る以外ない。
ポルトガルの天ぷら、カステラしかり、インドのカレーライスしかり、工業製品や工芸品、ひらがな、カタカナや宗教までも。

肉じゃがもそうである。
ヨーロッパに留学した帝国海軍の東郷平八郎が、現地で食べたビーフシチューの味が忘れられなくて、お抱えシェフにこんな料理だったと伝え、出来上がったのが肉じゃがらしい。
今ではもう立派な日本の家庭料理だ。

外国産でも良いと思えば平気で受け入れる。これは歴史的に作られた日本人の気質でもある。
これがDNAに刷り込まれているから、受け入れやカスタマイズに抵抗がない。
自分たちが使いやすいように、抵抗なく創意工夫する能力を「ガラパゴス能力」といえるのではないだろうか。

そうであれば、これほど優れた能力はない。
これまで国内向けにガラパゴス能力を発揮してきたが、これからは海外にでて、
その土地や現地の人たち向けにガラパゴス能力を発揮すれば良い。

 

グロパゴスこそが日本の進む道

私は、これをガラパゴス能力のグローバル化、つまり「グロパゴス」と呼んでいる。

このグロパゴスこそが、日本人に与えられた可能性でありミッションともいえる。
このグロパゴスの典型的な例は寿司である。
海外の寿司は、既に江戸前ではない。
その国にあわせた独自の進化を遂げている。
スパイダーロール、カリフォルニアロールなどはもう一般的。
チャーハン寿司やカレー寿司だってこれから誕生するかも知れない。

これこそグロパゴスである。
現地の人々の嗜好を大いに取り入れ、現地の人たちに経営を任せ、
現地仕様にした日本文化がグロパゴスである。

かつて、日本人が歴史的に日本国内においてやってきた事を海外でやれば良いだけの事である。
たとえそれが海外のものであっても、その長を摂り、短を補い、
我がものとなすというグロパゴス精神は世界に受け入れられるはずである。

先日、テレビで北海道の酪農家と群馬のこんにゃくメーカーの話を放送していた。
北海道の酪農家は、北海道の新鮮な生乳を使って美味しいチーズケーキを製造している。
この美味しいチーズケーキを作る技術をもってタイに渡り、
バンコク市内でタイ人のためのケーキ工場とショップを展開している。

作るのは教育されたタイ人の職人達である。
その繊細な甘さが評判をよんで既に数店舗に広がり、さらにシンガポールに進出している。

一方、群馬県のこんにゃく製造会社。
この業界は国内で高い関税で守られている産業であるが、
今後TPPの関係で海外からの安いこんにゃくが入ってくる可能性があり、
業界自体は戦々恐々としている中でこの会社だけは違った。

逆に海外に打って出ようとしている。
積極的にゼロカロリーのダイエット食として売り出し始めた。

しらたきをパスタにしてイタリアに売り込んだのである。
バジル風味のしらたきは本場イタリアでパスタとして認められ、注文が殺到している。
これを受けてドイツやスペインからも問い合わせが広がっているという。

これらはまさにグロパゴスの典型的事例といえる。
考え方を変えると、もう既に国境などないのかもしれない。

内海式23のマーケティングの法則に「好みの管理」というがある。
簡単に言うと「人は好きな事を繰り返す」という法則である。

食べ物で言えば人は結局好きなものを選んで食べ続けるのである。
そしてそれを美味しいと感じている。そもそも美味しいとは好みの管理そのものなのである。
昔から食べ続けたなれた味が美味しいと感じる事が多い。

おふくろの味と言われるものがその例である。
息子にとっておふくろの味は美味しいものである。
自分が子供の頃から食べ続け、慣れた味だからである。

しかし、嫁はそんな事情は知らない。
自分には慣れない味なのである。嫁と姑の問題はこの慣れの違いによるものかもしれない。

美味しいと思ってもらうためには、方法は2つしかない。
本当に技術を高度に極めるか、相手の慣れた味に近づけるかである。
相手の嗜好に迎合するのではなく、基準に合わせて創意工夫を加え、納得度を究極に引き上げて行くのである。

これこそがグロパゴスということになる。もうここは世界で日本人が最も得意とする分野でもある。すなわち、日本人が本気でグロバゴスを極めればもう世界の市場は我が手中にあり!である。