新・内海新聞 60号

この新聞が発行される頃には、中国の反日デモは落ち着いているのだろうか?
先日中国のパナソニックの工場が襲撃されて火を放たれた。あれを見ていて一つの時代の終わりを感じた。

今から約40年近く前の1978年。松下幸之助翁と鄧小平が固く手を握り合った写真が大きく報道された。
技術的に遅れていた中国は、松下幸之助に支援を依頼した。
当時、国務院副総理の鄧小平氏がわざわざ来日し「教えを請うつもりで参りました。」と頭を下げ
「中国の近代化建設にお手伝いいただけますか?」と問うと松下翁は「何であれ全力で支援するつもりです。」と答えた。

翌年中国を訪問した松下翁は異例の国賓級で迎えられ、まもなく上海に松下のブラウン管工場が建設され、多くの中国人の雇用に貢献した。
中国のことわざに「井戸から水を汲んだ人よりも、その井戸を掘った人を末代まで忘れない。」というのがある。
今回のパナソニック工場の焼き討ちは鄧小平をも否定することになる。デモ隊は毛沢東の写真を掲げている。
中国の政策が大きく転換したことを意味するのかもしれない。

 

【記憶】

大脳の働きの中の重要な機能に記憶があります。記憶とはどういう構造になっているのだろうか?

私の友人に恐ろしいくらいの記憶力の持ち主がいます。
一年前に名刺交換した人の名前や住所や電話番号を正確に覚えています。すべてです。
語学の勉強はしたことが無くても辞書さえあれば、それを一冊丸暗記して日常会話や文章を書いたりすぐ出来てしまう。
頭が良いということなのだけれど、忘れっぽい人にとってはうらやましい限りです。
しかし、忘れっぽい人にとってすべてのことを記憶するのは難しいけれど、好きなことは、はっきり覚えていたり、ある特定のことに関しては、殆ど忘れないということがあります。

私は、すべてビジュアルで頭の中に映し出すようにしています。覚えるのではなくて、映し出すだけです。
カメラのスナップショットを撮るような感じです。
写したものを整理することにしています。
これなら、この絵を思い出せば、その見えたとおりに説明すればよいので記憶している必要がありません。
ただし、映像化できるものしか駄目です。文字とかは駄目なのです。

これに気付いたのは、俳句を始めてからです。
人に進められてへたくそ俳句を始めました。俳句と言っても写生のような俳句で見えたまま表現しているだけですが、それはそれなりに楽しい。
俳句とは、捨てる文化と言われ、五七五の17文字の中に季語を含めて表現しなければなりません。
至難の業です。
余計な言葉や表現を入れると文字数がオーバーします。言葉を削りながら、表現力をアップする。
誰がこんなコトを考えたのかとふと思ってしまいますが、ハマルと面白い。
たった一滴の朝露の中に季節感や世界観を見つけ出す作業です。

この俳句で発見したことがあります。
苦労して、作った俳句は絶対に忘れないのです。自分の作った俳句はずっと記憶しています。
とても不思議に思いました。
俳句集を暗記していっても、全く覚えていないのに、自分の作った俳句は覚えている。何故なんだろう?

俳句とは右脳と左脳の連係プレーと言われています。
目で見た感動は右脳の世界。この感動を左脳で言葉を探し出し、俳句に仕上げる。こんな連係です。
俳句は、目で見た感動をずっと覚えているのだと思います。
自分の俳句を思い出すとき、五七五の文字の前に、右脳で見た景色をまず思い出す。
この景色から繋がる言葉を次に思い出す。そんな流れだと思います。
脳は右脳の景色を見ながら言葉を捜しだしているのだと思います。

私が学生の頃、下宿のおじいさんが痴呆症で、いつも同じことばかり話します。
今日の晩ご飯も覚えていない。さっき食べたばかりなのに。
しかし、面白かったのは、そのおじいさんが18歳の頃のことははっきり覚えているのです。
18歳、19歳、20歳という年代は覚えていました。こちらから質問しても、ちゃんとその頃のことを答えてくれます。
とても不思議でした。
その頃のシーンが頭に焼き付いているようでした。

やはり、記憶と視覚というのはとても重要な関係にあるのかもしれません。
これは網膜に映像を写すという物理的なことではなく、脳の中に焼き付けるイメージです。
焼き付けるのに最も重要なのは「感動」では無いでしょうか?
感動することが、映像として脳に焼付け、その映像を自分が思い出すことで、そこに関わる言葉やシーンを思い出す。
そのような流れでは無いかと思います。そのおじいさんもちょうど青春真っ只中!毎日が感動の連続だったのでしょう。

すべてにおいて感動は優先すると言えるかも知れません。
未知のものに対する発見は感動を呼び脳を活性化する。
恋愛も、新たな発見の作業であり、感動の連鎖ともいえます。
ヒトは、記憶したものは忘れないと考えています。忘れたのではなく思い出さないだけともいえます。
なぜなら、ある日突然何かのきっかけで昔のことを思い出すことがあります。
何かのシーンであったり、香りであったり、友人のふとした言葉であったり。
そのきっかけになるような刺激が、どこかにしまいこんでわからなくなっていた記憶を引っ張り出してくる。

記憶とは感動であり、脳の中での整理の仕方でどこにあるかが発見できる。そんな気がします。

 

【モノを持たない志向①】

貸衣装で面白い話がある。
私の友人でインターネット貸衣装ビジネスで大成功している女性がいる。
貸衣装店は昔から日本全国にあり、別に珍しいことではない。
その需要は着物やタキシード、モーニングなど婚礼のときのニーズに合わせたものが多い。だから結婚式場とタイアップして営業している店舗が多い。

貸衣装店にとって、結婚式は最大の需要となる。その結婚をする新婦に対して衣装を貸し出すわけなので、この新婦を探し出す必要があります。
しかし、これがなかなか難しい。どこにいるのか判らないからです。
結婚式場とタイアップすればよいかも知れませんが、それでは利益も薄くなるし、受注の数にも結婚式場の容量が限度と言うことになる。

名古屋に、A貸衣装店がある。
ここの営業戦略は非常にユニークです。これから花嫁になる女性を見つけ出す方法を独自に開発したのです。
それは、結婚する花嫁を見つけ出す前に、成人式に目をつけました。女性が振袖を着て成人式に出席する可能性が極めて高く、貸衣装に需要も高まります。
このA貸衣装店は、「成人式に振袖を借りてくださったお客様には、その後結婚されるまで何度でも無料で着物をお貸しいたします。」というキャンペーンを始めたのです。
つまり、成人式以降はタダで借りられるということで、より多くの成人女性のデーターベースを獲得し、彼女たちはいづれ将来結婚するので、それまでは無料でも結婚式の晴れ着で元が取れるという計算でした。
しかし、周囲の人たちは、そんなことをしたら、タダで借りようとする人が殺到してお店がつぶれてしまう!と呆れ顔でした。

その結果はどうだったのでしょうか。その後、数年間で成人式以降、無料の着物を借りに来た女性はたった一人でした。
成人式以降、自分の結婚式のタイミング以外の時に着物を着る機会は殆ど無いということだったのです。
結局このA貸衣装店はより多くの結婚予備軍の女性データベースを獲得することに成功し、結婚式の晴れ着のレンタルに成功しました。

ちょっと話を戻して、先ほどのインターネット貸衣装ビジネスですが、パーティードレス専用の貸衣装です。
ちょうど結婚式の披露宴に出席する女性たちのパーティードレスを貸し出します。
女性の心理として、お年頃の女性は何度もこの様なパーティーへの出席の機会があり、そこにいつも同じドレスを着ていくわけにもいきません。
新しいドレスを購入しても2~3回きればもうタンスの中で着られずに眠ることになります。
一方、これから新しいドレスを購入しようという女性も数多く存在します。
このビジネスは、家に眠っているドレスの委託を受け貸し出すというビジネスです。ネット上で申込みカード決裁されます。
在庫を持たず、女性のニーズを捉えた面白いビジネスです。

 

【モノを持たない志向②】

一方、ある男性はレンタカービジネスを始めました。
もともと大手企業に勤めていたのですが、決意してレンタカービジネスの世界に飛び込みました。
全くの素人ですが、彼はあることに疑問を持っていました。

あちこちにレンタカー屋さんは数多くあるけれど、どこも同じような自動車ばかり。
またナンバープレートも「わ」ナンバーでレンタカーであることがすぐに判ってしまう。
もっと格好いい、ポルシェとかベンツとかロールスロイスとか高級自動車に乗ってみたいと言うニーズは必ずあるはず、そう考えたのです。

しかし、そのような高級車を購入し揃えるには莫大な資金が必要です。
そんな時、あることを発見したのです。

東京都内には、高級車を何台も所有しているコレクターと言われる方々がたくさんいらっしゃいます。
そういう方々からお借りして、必要とする方々にお貸ししよう。
実際、高級車を沢山所有している方々は、車好きが多く、毎週エンジンをかけて走らないと車の調子が悪くなるので、それが面倒という声がありました。
だったら、車の状態を維持するために、レンタカーとして貸し出してはいかがでしょうか?ということになったのです。
お店はありません。
すべてインターネット上にあるバーチャル店舗です。
ネットで車を選び、予約しカード決裁します。

先ほどのパーティードレスのレンタル事業によく似ています。
最近のニーズとして、モノを所有する要求が下がっているように思います。
かつては所有することがステータスだったのに、今はその機能だけを求める新しい傾向が強くなっています。

かつて30年ほど前に人材派遣業というものが登場し、現在では当たり前の存在になりましたが「必要なときに必要な人材を必要なだけ」という、人材個人ではなく、その人材の持つスキルだけを時間当たりで購入するというビジネスが登場しました。
これは法人向けのビジネスでしたが、これが最近では個人にも広がってきていると言えます。

不況やデフレが長く続き、コスト意識がしっかり日本人の意識の中にも根付き、所有しても資産価値の期待できないものに投資せず、必要な時だけ借りるという必然のニーズが拡がり始めています。

また別の領域では、BookOFF のようなリサイクルビジネスも拡がったり、修理サービスなども同様です。
機能にお金を払うか、所有してしまったものを転売するか、或は修理して大切に使うか・・・・といった非購入型志向に意識が向くなか、メーカーにとっては益々苦難の時代が続くともいえます。