新・内海新聞 50号

TPPで国内大混乱ですが、少し視点を変えて見てみると違う姿が見えてくる。かつて日清戦争や日露戦争の時、陸軍はドイツ方式を採用し、海軍は英国を模範としました。海軍は船の中で食中毒や栄養の偏りから病人が出ては戦えないので、食料の自給や栄養管理を徹底しました。一方陸軍兵の中心は元農民たち。彼らはこれまでひえや粟といったものしか食べられず、軍人になれば白い米が食えると勧誘し、現地で米を強制調達して士気を高めました。結果、陸軍兵の2万人が脚気によって死にましたが、海軍での死者はゼロでした。現在、国内の食料自給率は世界で唯一カロリー計算しています。これであれば絶えず自給率は下がりっぱなし。

実際には日本は70%を越える自給率があります。しかし、この大半が米です。前述の海軍のように現在の日本は一隻の船に例えられます。そこに1億人以上の乗組員がいて自給できる米だけで生きた場合、栄養偏重になるのは当たり前で、海外から食料を調達しなければならないのは必至です。農林省こそ海外に食糧確保に出て行くべきですが、考えるのは国内保護だけです。人口ピラミッドといわれる人口分布曲線に併せて10年後20年後にはどの年齢層が中心になるとしたら、それに向けた生産計画や栄養計画を立ててこそ長期計画なのですがそんな戦略は現在見当たりません。TPPはそこからのスタートと思います。

 

友近忠至のシステム思考(7)「生命保険会社」

平凡社に転職した友近忠至さんは、日本図書信販という書籍を分割で販売する会社の取締役となられます。愛媛県の松山市で展開した月賦販売をもっと大々的に展開するためです。日本経済の力強い復興に伴って国民の学習意識の高まりから平凡社の国民百科事典は爆発的にその売上を伸ばしていきました。しかし、月賦販売には大きな問題がありました。商品としての百科事典は契約後すぐにお届けするのですが、料金の回収は月々分割での回収です。ですから、キャッシュフローが大変です。百科事典の製造のための資金が必要でした。友近さんは融資のお願いでいくつもの銀行に融資のお願いに行きましたがどこも引き受けてくれません。そもそも、当時は出版業というと水商売のような不安定な業界と見られていたために、どの銀行も引き受けてもらえなかったのです。資金が無ければ百科事典が作れません。このままでは事業が立ち行かなくなります。

そんなある日、故郷松山の旧制松山中学の同窓会が東京で行われることになりました。同窓会では旧友たちと懐かしい話で盛り上がりました。お開きとなって自宅への帰り道、A君と方向が同じということで京王線に向かって歩いていました。

「A君はM生命だったな。生命保険という業界の仕組みは良く判らんが、集まった生命保険の掛金は一体どういう扱いになっているんですか?」そう尋ねてみました。

A君は「保険金として支払われますが、大半は投資にまわして運用しています。ビルを建てたり、株式や国債を購入したり、企業に融資したり出資したりという具合にね。」

友近さんはその言葉に驚きました。「生命保険会社も銀行みたいに企業に融資するのですか?」「融資しますよ。でもその殆どはM財閥グループ内の企業が中心です。」

友近さんはあることを思いつきました。「Aさん。どうかね、私をM生命の幹部の方に紹介してもらえないだろうか?私のいる平凡社という出版社は百科事典で急成長しているが、資金繰りが厳しく資金が不足している。そこでM生命から平凡社に融資してもらうことはできないだろうか?」

その後、Aさんの手配で友近さんはM生命の役員と面談することになります。その場で資料を使いながら、事業の優位性や成長性を説明しました。熱心なその姿勢が通じたのか、M生命からなんと10億円というお金が融資されることになったのです。当時の10億円というとすごい金額です。友近さんはこの10億円を2億円ずつ5つの銀行に預金したのです。驚いたのは銀行です。

ついこの間まで融資のお願いに来ていた会社から今度は2億円もの預金です。一体どういうことかと大銀行の幹部が平凡社にやって来ました。そしてそれがM生命からもたらされたものであると判ると、今度はこの2億円を担保に融資枠を5億円つけますとか10億円つけますとか、申し入れが殺到しました。結局10億円の元手で35億円の融資枠を取り付けることになりました。

資金は調達できたのですが、新たな問題が発生していました。購入者は毎月千円ずつ月賦で振り込むのですが、やはり未入金が発生します。その未入金者を毎月迅速に発見し督促の葉書を送らなければなりません。毎月入金があると銀行から連絡があります。その情報を確認してコンピューターにパンチ入力します。その後、すでに入力された全購入者データから今月の入金者データを引き算すると、今月の未入金者が解ります。毎月未入金者は全体の2%なので、毎月ほぼ全数と同じ98%の契約者情報を入力することになります。

この入力量が新規契約の急増に伴って毎月どんどん増えていました。このままでは、人や設備を大幅に増やさなければもう間に合いません。友近さんはコンピューターメーカーにアイデアは無いか問い合わせました。その答えは、もっと高性能な大きなコンピューターに買い換えろ、というものばかりでした。そんなことをしたら、その経費で利益などなくなってしまう。壁に突き当たりました。

全体の契約者を(A)とし、今月の入金者を(B)としたら、今月の未入金者(C)は、(A)-(B)=(C)という計算式が成り立つ。
しかし、考え方を変えて(A)-(C)=(B)という式も成り立ちます。未入金者(C)はたった2%。この2%だけを入力したらもっと小さな設備でクリアえできるはず。
この話をコンピューターメーカーの担当者に話をすると、「それは素人発想です。その(C)が判らないから(B)を入力しているのでしょう。判らない(C)を先に入力するなど不可能です。」しかし、一ヵ月後、友近さんはその不可能を可能にしてしまいました。

サーチュイン遺伝子


カロリー制限は、研究されている全ての生物、酵母などの単細胞生物から虫、ハエ、ネズミあるいは霊長類などの多細胞生物において、寿命の延長と老化に関連する病気の減少をもたらすことが示されている。カロリー制限時に働く機構は、栄養、特に炭水化物の不足があるとき、細胞の代謝活性を変更する信号を受け取り、栄養に関係する多くの遺伝子と関連している。

細胞は、利用可能な炭水化物の減少を感知した場合、寿命に関連する遺伝子のDAF-2、AGE-1、およびSIR-2を発現させる。なぜ栄養の不足が、細胞中でのDNA修復の増加した状態を引き起こして寿命の延長を示す事と、進化において保存された細胞休眠の機構とに関連するのか、その理由は良く分からないが、本質的には、これらはいずれもより好ましい条件が訪れるまで細胞が休眠状態を維持することを可能にする。休眠状態の間、細胞は新陳代謝の標準とする速度を減少させ、同時に、ゲノムの不安定性を減少させなければならないが、ここに示された機構はこれらを可能にする方法の一つである。したがって、細胞の老化速度は変化しやすく、栄養の利用可能性といった環境要因もDNA修復速度を変更させることでこれに影響を与える。
(wikipediaより)

これをつかさどるのがサーチュイン遺伝子です。サーチュイン遺伝子は万人が持っているものの、普段は眠っていて働きませんが、アメリカ・ウィスコンシン大学が20年間にわたり行ったアカゲザルの実験で、エサを30%減らしてカロリー制限することが活性酸素の発生を抑え、サーチュイン遺伝子を働かせることが分かり、それにより寿命が20~30%延びることが確認され、人間でも、全米に会員約5000人がいるアメリカ・カロリー制限協会の実験で、カロリー制限により、血管が実年齢よりも若くなることが実証されています。

さて、前号のコラムにも書きましたが、私は年に数回ニンジンジュースだけで一週間断食します。数年前から始めていますが、伊東のヒポクラティックサナトリウムの石原結実医師の指導で始めました。ニンジン2本、リンゴ1/2個、レモン1/4個をジューサーで絞り、これを朝昼晩3回飲みます。10時に具のない味噌汁、3時にたっぷりの黒砂糖入りの生姜湯でカロリーと塩分を補給します。これだけで1100~1200kcalあり、成人で平均カロリーが1600kcalですのでほぼ摂取できます。ただ、蛋白質、脂肪、炭水化物が足りないので、体内の不要老廃物の中から探し出し燃焼し始めます。コレステロール・体脂肪・角質化した皮膚などです。

当時はサーチュイン遺伝子という理論はまだ発表されていませんでしたが、断食というのもサーチュイン遺伝子を活性化するための方法といえます。自然の中の動物たちも病気になると、食事を取らずじっとしています。これも生命維持の自然の本能なのかもしれません。

 

友近忠至のシステム思考(8)「集中から分散へ」

まず、契約者を本社で一括管理するのではなく、受注した支店単位で管理するように分散、支店ごとに顧客管理をするように変更しました。それからそれまで入金情報は本社にまとめて送られてきていたのですが、各支店ごとに分散して連絡してもらうように銀行に依頼しました。

そして驚くことに支店にはカステラの箱のようなものがいくつも配られたのです。この箱は2個並べて配置されました。各支店では、契約者情報は個別にコンピューターのパンチカードに保存されています。そのパンチカードを名前の「あいうえお順」に左の木箱の中に並べられていきました。毎月入金の締め日がくると入金者情報の連絡が入ってきます。そして入金があった契約者のパンチカードを左の箱から右の空箱に移動させるのです。これを繰返していくと最後に左の箱に残っている数枚が今月の未入金者ということになります。この数枚のパンチカードをコンピューターに通せば督促の葉書が印刷され郵送されるという仕掛けです。

大きなコンピューターの購入もぜず、キーパンチャーの大量雇用もせず、現状の環境の中でこの難題を解決してしまいました。コンピューターとは恐ろしく消化の早い胃袋のようなものです。大量の情報を瞬時に処理しています。

しかし、このコンピューターという奴は、極度の偏食です。ある決まった形のものしか一切受け付けない。この偏食に合わせて準備する作業はどうしても人手に頼ることになります。入力作業です。この入力という作業が一番の問題なのです。

人手に頼ることでミスが起こる、トラブルが起こる。またその作業量が増えることで労働環境が悪化する。いかにこの入力作業を減らすのかということに最大の関心を持っていたのが友近さんです。「入力至上主義」です。しかし、コンピューターを動かすためには入力を避けて通ることはできない。であれば、その入力作業を必要最低限に抑えることが必要になってくる。それにはワンライティングしかない。一回の入力ですべてが網羅されていることが理想。もしもそれが実現できれば、従業員たちが無駄な残業せずに済む、不要なミスで他に迷惑をかけることも無くなる。

友近さんがいつも言われることは、「システム化とは何でもコンピューター化することではない。また経費削減は結果的にもたらされるが、それだけの目的でもない。従業員の働きやすい労働環境をつくりだすことこそ、本来の目的である。」と。