新・内海新聞 44号

電力危機といわれています。原子力発電所は、定期的にストップして検査しなければならないと法律で決められています。今は17ヶ月位に一度停止します。そして3ヶ月くらい検査して再稼動というスケジュールです。しかし、今回浜岡原発を止めたとき、再稼動は防波堤を含めた津波対策が完了してからという暗黙の了解ができているので、2年間は再稼動は無いと考えられます。そして、中部電力の原子力依存度は20%程度で軽微です。しかし、関西電力や九州電力は既に50%を超えています。これらの原発も順次定期検査の時期に入ってきています。

さらに、原発の再稼動は知事の承諾が無ければできないという決まりになっています。今回、津波対策が完了しない状況では、知事は再稼動の許可を出しづらい。選挙のことを考えるとさらに出しづらい。もしもそんなことになると、電力不足は東京電力よりも関西電力のほうが最も危険という風になるかもしれません。現在、大阪には本社を移転したり引っ越したりで人口も増大し、電気の消費量も増える中やや心配な種です。

漁船から産直! 三陸とれたて市場

私の大学の後輩に八木健一郎さんという方がいます。岩手県三陸町でインターネット魚屋さんの「三陸とれたて市場」という会社を経営されている若い社長です。海洋生命学部が三陸町にあり、学部を卒業後そのままこの地にいついてしまいました。このインターネット魚屋さんのすごいところは漁船からの実況中継があることです。ビデオカメラを持って自ら漁船に乗り込み、漁の様子をリアルタイムでインターネットで放映します。そしてその獲れた魚介類をその場でインターネット通販してしまいます。クール便で翌日の午前中には自宅に到着します。毎回、即日完売の人気です。

インターネットが普及し、産地と消費者をダイレクトに結ぶ事業は沢山出てきました。野菜や肉などの農産物をインターネットで販売するものは結構あるのですが、漁船から産直通販というサービスは聞いたことがありません。魚介類というのは、漁が終わると港にある漁業卸売市場に持ち込まれ、仲買人が競り落とします。この三陸とれたて市場はインターネットが港の卸売市場の役割をしています。仲買人ではなく一般の消費者が直接買い付けることができるのです。もちろん、このお客様は一般の消費者だけではなく料亭の板前さんや街の魚屋さんというのもあります。

岩手県大船渡市三陸町というところは、大変海が豊かでとても良い漁場が拡がります。海岸線沿いには岩場が広がり、そこには様々な海の生物が生息しているのです。私が学生の頃は、夜になると大きなバケツと懐中電灯を持って岩場に行き、毛がにを捕まえに行きました。手づかみで捕まえられるのです。一時間くらいで10匹近く捕まえられます。そして、たまに大きなあわびが獲れることがあります。しかし、あわびは禁猟で見つけても捕まえてはいけません。ときどき密漁者監視のパトロールがあり、バケツの中のチェックがあります。毛がにや牡蠣は大丈夫です。海岸で火を焚いて、満天の星空の下で、バーベキューを寮の友人たちとしたものです。そんな素晴らしい自然の楽園に、今回の震災が直撃しました。

この三陸町は岩手県大船渡市にある越喜来半島(おきらい)にあり、大津波はこの半島ごとのみ込みました。三陸とれたて市場も港の漁協近くに事務所があったので、津波にのみこまれ流されてしまいました。しかし、八木さんはノートパソコンだけを持って高台に逃げて九死に一生を得ました。港はすべて流されましたが、元に戻すのではなく、これを好機と捉えて200年300年使える全く新しい魚の流通システムを創り出せば良いのだと、新たな闘志に燃えています。漁協は無くなってしまったので、そうだ!それなら漁場まで出向いて、そこから実況中継すればいい。そして、今まさに獲れたものを、その場でそのままインターネットで販売してしまえばいい、と今回の企画になりました。風貌は魚屋さんというよりも、ITエンジニアです。

一番IT化が遅れているといわれる漁業においても最近は様々な取り組みが試されています。沖合いにいる漁船にインターネットと接続されたパソコンが搭載されていて、各港にある漁協の仕入れ価格が一斉に表記される。その中で一番高い価格で仕入れてくれる漁協に漁船を向かわせて水揚げするという、漁業版
価格どっとコムのようなサービスもあるようです。兎に角、商品の信用維持のためのトレーサビリティーはさらに重要になってきます。その商品の流通の足取りが自由に見られるようにすることが商品力信用力に繋がっていくことは確実なようです。

〒022-0101岩手県大船渡市三陸町越喜来字前田33-1
TEL:0120-369-841 FAX:0192-44-348
三陸とれたて市場のHP http://www.sanrikutoretate.com/

長屋

子供の頃に住んでいた家は、下町のウナギの寝床のような長屋でした。父が獣医をしていて診療所のドアを入ると一番奥の台所まで、すべての部屋を通らなければならない構造です。裏は川になっていて、台所の炊事場の前には蓋付きの穴が開いています。生ごみなどそこから裏の川にポイポイと捨てていく。今では考えられない仕掛けです。トイレはあるのですが、私の子供の頃は、裏の川に向いたベニヤ板の薄っぺらい戸を押し開けて、そこからおしっこをしたものです。兄と向こう岸の板塀まで届くかどうかの競争をよくしました。右隣は、散髪屋さん、左隣は薬局です。隣の散髪屋さんとの壁は崩れて骨組みの板が所々見えていて、隣の部屋の様子まで見えました。その間を、カマドウマが行ったり来たりします。夕飯時になると隣の散髪屋さんのおかずまで見えてしまいます。そんな長屋も今では都市開発でなくなってしまい、近代的なビルに変わっています。

私の母と話すと、長屋というのは日本にとって大変重要な役割を果たしている、という「長屋マーケティング論」を語り始めます。確かに当時の長屋は古い建物でした、築数十年経っています。でも頑丈です。隣近所は仲がよく、おかずの交換や醤油や砂糖の貸し借りは日常茶飯事。怖い隠居のおじいさんがいて、悪さをすると他人なのにこっぴどく叱りつける。江戸時代から長屋というものがあり、長屋の入り口には番所という交番のような見張り部屋があって大家さんが小間物屋をやりながら怪しい人物に目を光らせている。中の広場には井戸があり、そこにお母さん方が集まり世間話や情報交換をしながら洗濯や炊事の支度をする。長屋には寺子屋のような学習塾をするものもいたり、怖くてしつけに厳しいご隠居がいたり、長屋単位で子供のしつけから教育、またその家族の生活支援を相互で行う。またその家賃も安く、貧乏な人でも十分生活してゆける。このまま現代に置き換えるのは難しいかも知れませんが、コミュニティー重視の生活環境は見習うべきものがあります。

今回の地震の被災地で仮設住宅の建設が急ピッチで進んでいます。私の実家は阪神大震災で被災しました
が、プレハブの個室形式の仮設住宅は、ご近所付き合いを希薄にし孤独死してしまった方も数多くいらっしゃいました。厳しいかもしれませんが江戸時代の長屋のように、顔を見合わせて生活できるようなコミュニティーとして作って頂ければ、皆が安心して生活できるのではないか?そんな気がしてなりません。写真は銭形平次に出てきそうな江戸の長屋の風景です。

ひまわり

震災の津波の影響で福島原子力発電所が大きな被害を受け、放射能漏れが続いています。ヨウ素とセシウムです。ヨウ素の半減期は8日間ですが、セシウムの半減期は30年と長いです。そんな放射性物質を吸着する植物があります。「ひまわり」です。1995年に米ラトガーズ大学のスラビック・デュシェンコフ博士ら旧ソ連出身の植物学者達が、チェルノブイリ原発から1キロ離れた池で20種類の植物を栽培し、ヒマワリがセシウム137を根に、ストロンチウム90を花に蓄積することをつきとめたといいます。もしも、これが事実であれば地球に優しい放射能除去が可能かも知れません。

もともとこの分野は日本が世界でも先端技術を持っており、様々な応用例が発表されています。これらは土壌改良のための技術として発展してきました。特に土壌の中に含まれる重金属を除去するための土壌微生物や植物の開発です。有名なのがヨシです。ヨシは成長が早く育てるのが簡単で増殖には適しています。このヨシが重金属の吸着に大きな威力を発揮します。東北大学大学院工学研究科の准教授、中野和典氏によるヨシを原材料とした高性能重金属吸着剤の研究で、その開発に成功しています。この技術は湖沼や河岸等の水辺の水質浄化機能を担うヨシをはじめ、色々な植物バイオマスを原料として高性能な重金属除去・回収性能を有する吸着剤を製造するもので、従来、一般的に用いられている活性炭等のように植物バイオマス由来の原料を炭化させるプロセスを経ることなく、簡易な化学処理により植物バイオマスそのものの優れた重金属吸着性能を引き出すことが可能です。これは、安価で高性能、省エネルギーな吸着剤製造方法だそうです。

また遺伝子組み換え技術を用いた方法もあります。研究によると、カラシナの一種に遺伝子操作を施すことで、毒性を持つ重金属のセレンを吸収する能力が430%も向上したという報告があります。いずれにしてもこの厄介な重金属を吸着する植物がある訳ですから、放射性物質を吸着する植物は、ひまわり以外にも、まだまだ沢山あるかも知れません。もっともっと研究していただきたいです。やがて、夏になって福島県一面にひまわりの花が咲き乱れ、放射能の心配など全く無用の風景が広がっていることを望みます。