新・内海新聞 27号

この原稿は2009年の12月に書いています。お届けできるのは年が明けた2010年の1月です。2009年は、とても時間の経つのが早かった気がします。年末に今年の漢字として「新」と決まりましたが、確かに新しいことが多かったようです。アメリカ合衆国では「変化」を旗印にオバマ大統領が当選し、国内では新政権誕生、新型インフルエンザ拡大、イチローは連続年間安打数新記録・・・

まだまだあるようですが、新しいという言葉には何か「ワクワク感」があります。新年が明けて、いよいよ2010年が始まりました。21世紀になってすでに10年。子供の頃に読んだ手塚治虫さんの「鉄腕アトム」の世界も、たしか21世紀。鉄腕アトムの誕生日は2003年4月7日。すでに、それよりもさらなる未来に自分たちがいるんですね。

農民ロッソ

私はワインが大好きなのですが、最近そのコレクションに入った1本があります。それが「農民ロッソ」。栃木県のココ・ファーム・ワイナリーという農場で作られています。この農民ロッソは、重くもなく軽くもなく、フルーティーで若干ピノ・ノワールにも似た宝石のようなワインです。このココ・ファーム・ワイナリーは、栃木県足利市にある「こころみ学園」という特殊学級が母体です。こころみ学園の園長である川田昇さんのホームページから引用すると以下のように紹介されています。「1950年代に、特殊学級の中学生たちによって開墾された葡萄畑が、私たちのワインづくりの原点です。この足利市田島町の急斜面の山で、当時、知恵遅れと呼ばれていた少年たちは、汗まみれになりながら夏草を刈り、寒風の吹きすさぶなかでお礼肥えの穴を掘ってきました。平均斜度38度のこの葡萄畑は、陽当たりや水はけがよく、葡萄にとっては最良の条件です。しかし、耕運機やトラクターが使えず、人間の足で登り降りするしかありません。

剪定後の枝拾いや、堆肥を運びあげる仕事、一房一房の摘房作業、そしてかごをかかえての収穫・・・全ての作業が、自然のなかでの労働を通して、自らの力をつけ、その力をもとに自然の恵みを引き出していくことでもありました。そんな毎日の暮らしのなかで知恵遅れと呼ばれ続けてきた少年たちは、知らず知らずのうちに寡黙な農夫に、陽に灼けた葡萄畑の守護人に、醸造場の働き手になっていきました。

1980年代のはじめに、知的なハンディを持つ人たちの自立を目指してつくられたこころみ学園のワイン醸造場も、1980年代の終わりにこころみ学園の園生たちが葡萄を植えたカリフォルニア・ソノマの葡萄畑も、まさに自然のなかでの労働と暮らしから、自然の恵みであるワインを享受していくことでした。現在、この葡萄畑から一望できるこころみ学園には90名の利用者がいます。そのうち85歳を筆頭に50歳をこえた人は56名。つまり、ここに働き暮らす人たちのうち、約2分の1が高齢の知的障害者です。草刈りに大がまを振るっていたA君も山のような洗濯物を干してきた I さんもだいぶ歳をとりました。

彼らは今、ゆっくりとではありますが若い農夫と一緒に、あらたな葡萄畑の開墾に明日の夢をつないでいます。私たちは、伝統や名声を誇る外国のシャトーのように、潤沢な資金を持つことができません。大手のワインメーカーのように、大量生産することもできません。しかし、葡萄を育てワインを醸す仕事に、名もない(自分の名前さえ書けない)人たちが中心になって取り組んできたことを・・・どんなに辛くても、一年中空の下でがんばってきた農夫たちがいることを、ひそかな誇りに思っています。

ここにご紹介するワインは、葡萄づくりに、ワインづくりにがんばってきた知的障害の仲間たちが、のんびりと葡萄畑で自分にあった仕事-草取りや、石拾いや、カラス追い-をしながら、自然に囲まれて、安心して年をとっていけますよう、そんな願いが込められています。歳をとることは明日があること、明日があることが続くと、おじいさんやおばあさんになること。「あした(明日)、がんばん(がんばる)」・・・ここの農夫たちに、思う存分のお力添えを賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。」

少し謙遜気味に書かれていますが、このワインはなかなかのものです。造られた方々の働く姿を想像すると感謝の気持ちすら湧いてきます。私の好きな農民ロッソには「ベイリーA」という葡萄が入っています。これによって甘みは芳醇な香りがさらに引き立ちます。このココ・ファーム・ワイナリーのワインとシャンパンは、前回先進国首脳会議の洞爺湖サミットのパーティーに振舞われたそうです。こころみ学園の皆さん、本当によかったですね。がんばってきた甲斐がありました。ちなみにこの農民ロッソは1800円で販売されています。

Bar 西山

今から15年以上前、東京の芝に「Bar西山」というお店がありました。夜20時からオープンするBarです。そのお店のオーナーは西山裕之さん。インターネットのGoogleで検索すると1万件近く出てくる有名人です。このBar西山は、芝にあった彼の自宅です。この自宅の2DKのアパートを改造してBarにしました。夜な夜な、あちこちから好奇心旺盛で野心的な若者たちが集まってきて、毎日酒を飲みながら将来を語り合う・・・そんなBarでした。

Barは営業許可も何もありません。西山さんの自宅で毎日宴会が行われている格好です。したがって、Bar西山はすべて会員制です。年会費を支払うと、お店での飲み食いの費用はすべて原価です。食べ物は乾き物と宅配のピザのみ。店長兼オーナーの西山さんが忙しくて20時までに帰宅できない時は、一番最初に来た客が店を開け準備をしてオープンさせます。部屋の中は、ビールケースを積み上げてバーカウンターをつくり、窓には色つきのセロハンを張り、店内を薄暗くして間接照明で、まさに隠れ家的Barに仕上がっています。

西山裕之さんとは、出会ってからすでに25年近くの月日が経ちます。彼はまだ神戸大学の大学生でした。私が、株式会社パソナの事業開発部にかかわり始めてから出会いました。学生企業家のリーダー的存在でした。大阪の西中島南方という小さな駅に程近いマンションの一室で「合宿運転免許」の取次事業をしていました。当時としては画期的なサービスメニューを作って大学生の受講者の集客では圧倒的な実績を残していました。それが、大阪の伝説的学生ベンチャー企業の株式会社リョーマです。西山さんとパートナーを組んでいたのが、その後サイバードを創業する真田哲弥さんです。西山さんは、その後上京し自らも起業し、現在はGMOインターネットの専務取締役です。

彼が芝でBarを始めたのは、上京し最初に手がけた事業を手放した後の充電期間の時期でした。そこにやってきた若者たちはその後さまざまな分野で大活躍を始めることになります。やはり、類は友を呼ぶというのか、それぞれの情熱が核反応を起こすようにエネルギーの大爆発だったように思います。ここから生まれた事業も数知れず、その後のITベンチャーブームの火付け役になったことはいうまでもありません。サイバード、まぐクリック、GMO、インテリジェンス、DoCoMo、ザッパラス、Klab、ハイパーネット・・・・・私もよく通いました。集まってきた方々のその前向きなエネルギーに多大な影響を受けました。

シェアリー sharely

最近、友人が会社を創業しました。一言でいうと「信託事業」です。世の中には、たくさんのパーティードレスを持っていても、着る機会のない人がいます。一方では、お年頃でパーティーに呼ばれる機会が多いのに、その衣装代に多額のお金を出せない人もいます。それらのニーズとシーズを仲介するビジネスです。

ちょうど20代~30代の女性は、大学の謝恩会や同窓会、結婚披露宴やさまざまなパーティーに参加する機会が多くなります。そうするとその時に着ていくドレスに悩むことになります。いつも同じものばかり着ていけません。同じ年頃の女性ばかりですので、別のパーティーでもバッタリ!ということもあり得ます。そんな時、以前と同じドレスを着ていたりしたら・・・。そんな女心をとらえたビジネスを考えました。

世の中にはドレスを買い集めることが好きな女性がたくさんいることがわかりました。そのドレスやバッグやアクセを預けてもらいます。その様に信託を受けたものをコーディネートして1日単位で貸し出します。すでに10月からプレ営業を始め、12月には正式オープンとなりました。

すでに噂を聞きつけてオーダーが毎日入ってきています。ただ貸し出すだけではなく、さまざまな女性目線での工夫をしています。まずサイズ。サイズはすべて9号とかの標準体型だけに絞っています。これは有名ブランド品に限定してメーカーごとのサイズの違いもだいたいわかるようにしました。これだとブランド毎の傾向がわかるのでほとんど失敗はありません。さらにスタイリストを入れて、バッグや靴やアクセのコーディネートをしてセットで貸し出しをしています。選ぶほうも楽です。もちろん単品でのレンタルもOKです。すべてオーダーはインターネットですが、試着室も持っています。心配な方は、試しに着てみることもできます。ただし東京近郊の方のみ。さらに、シーズンにあわせたキャンペーンを実施。今週まではクリスマスパーティー向け。来週からは成人式や大学の謝恩会向けキャンペーンです。いまのところ順調のようです。大体一着1万円~1万5千円くらいのレンタル価格です。

「なぜこんな事業をはじめたの?」と質問したら、「いや、何か今の時代に自分の爪痕を残してみたかったからです。せっかくの人生だからね!」いやいや、今どきの女性のほうがなかなか頼もしい!!

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