新・内海新聞 21号

クックパッドという会社があります。お料理のレシピのデータベース屋さんです。全国の主婦が自分の自慢料理のレシピを投稿します。そして、そのレシピは誰でも自由にインターネットで無料閲覧することができます。その会員である主婦の数が600万人!このサイトの命は検索エンジン。素材で検索します。冷蔵庫をあけて残り物の野菜や肉を入力し、検索ボタンを押すと、その素材のメニューが出てきます。

その数がすごい。試しにキャベツで検索したら31,000件も出てきました。面白いのは、検索で「除く」検索ができます。グリーンピースが苦手な方が、グリーンピースを除く検索に入力すると、グリーンピースを使わないレシピが表示されます。さて質問です。この会社はどこで儲けているのでしょうか?広告以外の収益が中心です。

ベンチャーフェア開催

前回からの続きです。とにかく何か始めないと、会社がつぶれてしまう・・・。そう焦った私はいろいろ考え始めました。何を始めるのにも人材が第一。良い人材をそろえなければだめだ!

そう考え、企画したのがベンチャーフェアというイベントでした。昭和63年のことです。大阪で開催した「転職博覧会」の焼き直しのようですが、企業がブースを出展し、それを一般の方々が見学にやってくるスタイルのイベントの企画です。

前回と違うのは、企画提案イベントである点です。出展している企業は新規事業開発室の方々。そして見学にやってくるのは学生で、自分の考えたアイデアを企画書にまとめて出展企業の担当者に提案するというものです。そこで、企業に認められれば賞品がもらえ、さらに企業が進める新規事業に参加できるという仕掛けです。このイベントは、学生のアイデアを集めるという趣旨もありますが、もっと重要なのはその企画を提案してきた学生自身の獲得にあります。出展起業は、提案してきた学生も一緒に採用してしまおうという、人材採用の目論見もありました。履歴書や数回の面接では、その人物像は解らない。しかし、企画書にアイデアをまとめると、そこにはその企画した人のひととなりや、熱意、知識レベル、行動力など十分に推測できる情報が詰まっています。そういうことで各企業の新規事業部に営業を開始しました。

昭和63年は、まさにベンチャーブームが始まった頃。猫も杓子もベンチャーでした。提案のネタとしてはぴったりでした。オリックス、ソニー、アート引越センター、コスモ石油、大東京火災海上、大塚製薬、学研などなど大企業から出展申込みがきました。もちろん出展費用を戴く事業ですので反応は上々です。これで、出展企業側は問題ありません。

今度は学生側。企画書を書いて提案に来る学生を募集するのは大変でした。そこで、関東の各大学のメディア系サークルに対して営業を始めました。すべて、たった一人でやっているので、毎日大変でしたが、これほど充実した日々はありませんでした。当時、学生ベンチャーを多く輩出していた明治大学、青山学院大学、日本大学、日本医科大学、上智大学、神奈川大学、東京工業大学、津田塾大学、一橋大学などなどの大学サークルへ参加依頼に行きました。また、インターカレッジで活動しているサークルにも営業しました。

西川りゅうじんさんが率いるキャンパスリーダースソサエティー(CLS)という連合体にも参加要請に行きました。会場はラフォーレ原宿のイベントホール。私は結局この2日間のイベント開催のために資本金500万円のすべてを使い切ってしまいました。今では考えられないことですが、当時の大学生は就職よりも起業を考える学生が沢山いました。実際に、学生のうちから起業している人も何人もいましたし、これは男女問わずです。マスコミもその様な大学生を積極的に取材するので、さらにそのブームは加速してゆきました。イベントには、2日間で約180名の大学生と200件以上の企画書が集まりました。そのまま、出展企業に就職した学生もいましたし、スポンサーになってもらって自ら起業した学生もいました。参加人数としては物足りないものもありましたが、内容としては非常に満足のいくもので、出展企業からの評判も非常に良かったのです。そして、私の会社にも10数名の大学生スタッフが確保できました。

この昭和63年から平成3年という時代は、日本中バブルに沸く異常な時代ではありましたが、野心のある優秀な若者たちが数多く出現した時代でもあります。現在活躍するベンチャー経営者達は、バブル時代に創業したり、起業に関わった人が非常に多いのです。これは、なぜだろう?と友人たちと話していたら、こんな結論になりました。「やはり、バブルでいい思いをした人は、それが忘れられないんだよ。夢よもう一度!なんだね。」そして、それは遺伝子にも刷り込まれていて、バブルで狂騒したのは、団塊の世代の人たち。そしてその後のITバブルで狂騒したのは、その団塊の世代のジュニアたちでした。非常に不思議な思いです。

経験ノウハウの伝達速度とは?

数年前に上映された「アマデウス」という映画がありました。天才作曲家「モーツァルト」の生涯を描いたものです。当時ヨーロッパの音楽家は宮廷音楽家といって、国王や女王や教会のお抱え作曲家でした。国王や司教からこんな曲をつくれと命ぜられて、言われるまま作曲するという縛られた音楽活動だったといいます。

作曲家たちに自由はありませんでした。そんな頃、自分の考えで自由に作曲したいというベンチャー作曲家が登場します。それが「ベートーベン」です。古典派からロマン派への足がかりをつくりました。ハンディキャップを背負いながら、自分自身の音楽に没頭したといいます。

その頃、多くの新進作曲家たちは、街の酒場に集まり、既成概念にとらわれない発想で、これからの音楽の夢を語り合いました。天才バッハの影響を受けたモーツァルトやベートーベンをはじめ、ショパン、シューマン、ブラームスなど、数えきれないほどの大作曲家たちが誕生してゆきます。この時代にだけ、沢山の天才音楽家と言われる人たちが誕生しました。

私は、非常に不思議に思います。
なぜ、あの時代に集中的に天才音楽家たちが誕生したのか・・・・・?歴史を見ていると、ある時代に集中的に天才や英雄が誕生するときがあります。満遍なく出てくればいいのに・・・そう思うのですが面白い現象です。何年かに一度、バッタやカエルが異常繁殖するように、なにか自然の摂理でもあるのでしょうか?

でも、想像するに、このクラシック音楽家たちは、夜な夜な居酒屋に同業者たちが集まって酒を酌み交わし議論をし夢を語ったのだと思います。また自分の考え出した旋律やアイデアを披露したと思います。ある一人の天才が誕生すれば、その天才のノウハウは次々と伝播し共有され、互いに影響を与え核融合のようなことが起こるのでしょう。そのためには、なるべくその天才に近づき、直接そのテクニックを教えてもらうことなのかも知れません。それが、ノウハウの伝播に大きく影響してゆくのかもしれません。

先日、友人達と食事をしていたとき、「モンハンやってる?」という話になりました。私は「モンハンって何?」と質問すると意外な顔をされました。プレイステーションポータブルという携帯ゲーム機のゲームソフトのことです。正式名を「モンスターハンター」といいます。

ゲームのストーリーは、ある狩人が大平原を旅するのですが、その途中でモンスターが襲ってきます。このモンスターと戦って勝たなければ先には進めません。そしてそのモンスターに勝つ毎に、より強い武器を手に入れることができます。ルールはいたって簡単。このゲームは無線でリンクして、2人でも3人でもチームを組んで、旅をすることができます。その時、私の目の前で二人の友人が無線でリンクしてチームでゲームをし始めました。モンスターに二人で向かっていけばそれだけ強くなるので、より強い武器が手に入ります。強い人とチームを組むことが大切。組むことによってその戦い方やゲームの使い方を早く学ぶことができます。「だから、このゲームは爆発的に売れているんだ・・・」師匠に近づいて学ぶことこそ、そのノウハウの伝達スピードは、より加速してゆくのだと思います。

かつてのクラシック音楽家たちも、街の居酒屋で優れた音楽家と語り合うことで、より進んだアイデアが伝播し共有することで一気にそのレベルが向上していったのかも知れません。

そういえば、アメリカでこんな話を聞いたことがあります。それは、10年ほど前にアメリカに出張した時のことです。ノーベル賞学者の講演を聞く機会を得ました。 それは、こんな話です。ある大型のシステムを導入した会社が、社内に普及させるために「新システムを使って、成績優秀であれば懸賞金を出す!」というキャンペーンを実施しました。

1年間のキャンペーン期間が終わって結果を集計すると、ダントツの第一位は、カウボーイというニックネームのわがままな営業マン。いつも自己流のやり方で仕事をするが、成績は優秀。今回もそうでした。 ということで、これは対象外として次に第二位を見ました。第二位は女性でした。 この人もダントツの成績。 でも、彼女も新システムを使っていない! 続けて、第三位、第四位も女性。なんと、この二人も新システムを使わずに成績が優秀でした。

そして、このトップ4人の共通点を調べて驚嘆します。 第二位~第四位の女性すべてが、 新システムを使わずに優秀な成績だったのです。システム導入責任者は困りました。さらに、このトップ4人の共通点を調べて驚嘆します。第二位~第四位の女性たちは、 第一位のカウボーイの両隣と向かいに席があったのです。彼女たちは、カウボーイのやり方を見て学習し成績をアップさせたのです。そのノーベル賞学者はこう結論付けました。

「ノウハウというものは、 その優秀な人との距離が近づけば近づくほど 伝達速度は加速する」・・・と。
モンスターハンターのチームで戦う様子を見ていて、そんな10数年前のことを思い出しました。