新・内海新聞 12号

糸川英夫博士。もう亡くなられましたが、博士の逆転の発想が大好きでした。中学生の頃、何度もファンレターを書き、お返事も頂いたことがあります。戦争中は戦闘機「隼」の開発。戦後は宇宙ロケットの開発と、航空工学の権威でした。私は、子供の頃、博士のその発想法に感銘し、博士のようになりたい!と思ったものでした。

最も感銘を受けた話が「ゴルフ」の話です。ゴルフは、老人が準備運動もせず、いきなりドライバーをブンブン振り回すから、ゴルフ場で脳溢血で倒れる人が多い。だったらルールを変えて最初はパターから始まり、徐々にボールを飛ばすようにして、最後にドライバーでホールインワンを狙う競技に変更すべきだ!!と真剣に訴えられていました。感動しました。これだったらタイガーウッズとも戦えるかも。

常識とは反対の血管塞栓術

先日、あるIT会社の副社長のY氏と食事をしました。その会社は医学用画像処理技術のパイオニアの会社です。そのときの話題が、放射線治療学。この放射線専門医をもっともっと増やさなければならないとい熱弁されていました。この分野の専門医は、現在国内に400名ほどしかいないそうです。欧米から見てもはるかに立ち遅れている。放射線というと、レントゲンとか、癌の放射線治療とか、医師の中では地味で、あまり知られていません。

先日知人の医師に聞いてみたら「放射線医というのは、患者と会うことも少なく感謝されないし、手術を支配する外科医のパシリみたいなもんだからね・・・つまらない職業だよ。」と一言。本当にそうなのだろうか・・・?なぜ、放射線治療に可能性があるかというと、この分野がIT技術と極めて親和性が高く、通信技術にも関係し、そしてものすごい速度で進化し続けているからです・・・とY氏。しかし、日本においてこの分野の人気が無いのは、恐らく、日本は世界で唯一の被爆国であり、この放射線とか核といういう言葉に対して非常に敏感で拒否反応が強いからかもしれません。

さて、放射線医療(Radiology)とは、放射線を用いた診断や治療等を中心とした医学の一分野である・・・とあります。そして、「放射線診断学」「放射線治療学」「IVR」の3つに分かれます。このIVRは、CTやMRIという断層写真技術や、画像技術を駆使してピンポイントで患部を特定します。そして、カテーテルを用いた手術を行います。更にIVRには、血管内治療というものがあり、「塞栓術・閉塞術」というのがあります。血管内にわざと塞栓剤というアロンアルファのような詰め物をし、血行を止める方法です。

癌細胞とは内蔵などに付着し血液を吸い上げて生存しています。つまり、自立生存できないのです。写真でみると癌細胞の周囲に血管がまきついています。そのがん細胞に伸びた血管の枝の一本一本にカテーテルを使って、アロンアルファのような化学物質を注入して塞栓し、血行を止める方法です。これによってがん細胞は死滅します。Y氏は鞄からイラストを取り出して詳しく説明してくれました。

一番上の絵が肝臓にできた癌です。新生血管という血管が巻き付いているのがわかります。次の絵が血管内にマイクロカテーテルを挿入したところです。3番目の絵がマイクロカテーテルの先端から塞栓用の化学物質を注入しているところです。

4枚目の絵は塞栓によって血流が止まり、癌細胞が死滅したところです。大きな特徴は、外科的切除手術を極力避けることができ、患者への負担が非常に軽い点です。もしもの時、外科医だけでなく、放射線専門医に相談することをお奨めしますとY氏。乳癌でも切除せずに治療が可能になります。

身近で私の友人が3人も乳腺癌になってしまいました。30代という若さです。どんどん若年齢化しています。食の欧米化や晩婚少子化が原因という報告もあります。もちろん、まだまだ始まったばかりの方法ですので、すべて万能ではありませんが、この治療を支えるIT技術は著しく進化し続けています。

重要なことは、画像処理技術やCTやMRIといった断層写真技術を使って正確に患部の位置を特定する必要があります。しかし、このMRIは予約待ちが多く、また機械自体が高価なため、なかなか簡単に病院に設置することができません。このMRIこそ24時間365日稼動体制で利用できるようにすることも必要かもしれません。

静かな時間

小田原ネタを二つご紹介します。
以前、小田原である会議に出席した時のことです。会議のレジュメの一番最後に「静かな時間」と書いてある。

「えっ!?」と思いました。静かな時間って何だろう?
私は、隣に座っている参加者の方に聞きました。
「この最後の静かな時間というのは何ですか?」すると、
「静かな時間というのは、字の如く静かな時間の事です。」
「???」 皆目意味が判りません。
仕方なく、その時刻まで待つことにしました。

やがて、すべての議案が終了し、いよいよ静かな時間です。わくわくして待っていると・・・すると議長が、
「では、皆さん。静かな時間です。宜しくお願いします。」・・・・・・・
「え、何???」
周囲を見ると、目をつむって瞑想している人、今の議事録を読み返している人、深呼吸している人。何か黙ってメモをしている人、それぞれめいめい違うことをしていますが、共通していることは誰も声も出さず物音もたてず、まさに静かな時間が流れています。「静かな時間ってこういうことなんだぁ」約2~3分経って「はい、時間です。皆さんお疲れ様でした。」

それぞれは、帰り支度をしています。私は再び質問しました。
「今の静かな時間というのは何ですか?」すると、こんな答えが返ってきたのです。
「静かな時間というのは、じっとして興奮している気持ちを心落ちつかせてすごす時間の事です。スポーツで言うクールダウンと同じです。ゆっくりと情景を愉しむように会議の場面を創造してください。脳は、まさに興奮して充血した状態です。これを冷やすことで、よりしっかり記憶でき、整理できるものなのです。この静かな時間は、もう60年も続いているのですよ。」へぇー。

驚きました。確かに、この喧騒の世の中で、静かに数分間心落ち着かせてじっと静かにしているというのは至難の技かもしれません。テレビをつけても、大音量のコマーシャルと怒鳴り声ばかりのお笑い番組ばかり・・・。最近は神経を研ぎ澄ます行動が無くなり、繊細な心が失われつつあります。この静かな時間は、それ以来、私の中で取り入れて、できる限り余韻を楽しむようにしています。

小田原銘菓ういろう

小田原の市内にひときわ目立つお城のような建物があります。小田原城とは違います。初めて見たとき、なぜお城が二つもあるのだろう・・・と思ったくらい本物のお城そっくりの建物です。

それが、「ういろう」というお菓子の本社ビルです。「ういろう」といえば名古屋のお菓子で、青柳ういろうが有名です。その名古屋の会社がなぜ小田原にあるのだろう?・・・そんな風に思っていました。しかし、このういろうというのは人の苗字であり、この小田原から誕生したものであることを知り驚きました。私も知りませんでした。「ういろう」というのは、本来お菓子屋ではなく、もともとは薬屋さんでした。旅人が常備薬として持ち歩いた仁丹のような薬をつくっていました。実は、今も製造していて販売していますが、すぐに売切れてしまいます。漢字で書くと「外郎(ういろう)」。調べてみると、こんな説明がありました。

「外郎(ういろう)は、仁丹と良く似た形状・原料であり、現在では口中清涼・消臭等に使用するといわれる。正しくは透頂香(とんちんこう)と言う。中国において王の被る冠にまとわりつく汗臭さを打ち消すためにこの薬が用いられたからという。」もともと中国の元朝に使えていた陳延祐という人が日本に帰化して、中国での官職名「礼部員外郎(れいぶいんがいろう)」の「外郎」をとって官職名と間違えられないように唐音の「ういろう」と名乗りました。以後、600年以上、今日まで外郎は直系しか名乗れない苗字として続いています。

この仁丹のような薬を作る中で、練り菓子も考案し、現在の菓子の外郎が出来上がっています。もともと九州の博多にいたようですが、子の代で京都の足利義満に医者として仕え、ひ孫の代で北条早雲に召抱えられ小田原に移り住み、現在もお菓子と薬の「ういろう」を作り続けています。

しかし、小田原という街は不思議な町です。城下町であり東海道の重要な宿場町でもあります。かつて、豊臣秀吉や徳川家康が憧れたといわれ、特に家康は小田原のような街を江戸に作りたいと、いろいろ小田原の模倣をしました。有名なのが地名で、小田原の町の地名をそのまま使っています。たとえば、銀座や板橋、荻窪などなど。驚かれましたか?実は、銀座も小田原から江戸に伝わり、全国に広がったそうです。