内海新聞 38号

神戸市にあるJR神戸駅から浜側に歩くと「神戸ハーバーランド」があります。その一番南側に「モザイク」というエリアがあります。そこに、私のお気に入りの日本一美味しいお好み焼き屋さんがあります。「やきものや・どんどん」(078-360-0125)です。昭和34年創業です。阪神大震災後、三宮からこのモザイクに移転しました。

マスターの伊勢護朗さんはアイデアマンでここでしか食べられないお料理がいっぱいです。もちろん味は最高です。チーズ入りの「どんどん焼き」、「みやこそば」という日本そばのそば焼きはレモンを絞って召し上がってください。蛸のマリネも美味。ドイツピーロート社の白ワインを片手に美味しいお好み焼きはいかがでしょう?

http://www.mainichi.co.jp/osaka/oiside/200204/04.html

緊張と緩和

私は落語が大好きです。もっと詳しく言うと落語というより落語家が好きなのかも知れません。大好きな落語家は桂枝雀さんと笑福亭鶴瓶さんです。最近は桂小枝さんもランクアップしてきました。ちなみに小枝さんは私の高校の1年後輩です。お笑い系俳優の生瀬勝久さんも高校の後輩です。(余談)桂枝雀さんは自殺してしまいましたが、彼の落語理論は大変共鳴するところがあります。彼は神戸大学の経済学部を出られた秀才です。生前こう言われました。

落語は「緊張と緩和」の繰り返しです。さわりでは、ボソボソと小さな声で話しています。観客は何を言ってるのだろう?緊張して耳を澄まして聞いています。そこに突然、奇声を発したり、オーバーな仕草をしたり、オチをつけたりして観客は大爆笑です。この大爆笑が「緩和」なんだそうです。緊張がないと緩和はありません。緊張ばかりでもだめだし、緩和ばかりでもだめ。すごく良い勉強になったのを覚えています。我々の仕事も同じかも知れません。また人使いのところも、この緊張と緩和の使い分けが奥義なのかも知れません。

もう一人好きな落語家が笑福亭鶴瓶さんです。関西では落語のできない落語家として有名です。(失礼)彼がまだ新人の時、あるネタを思いつきました。「小話その一」「小話その二」といって、いくつも小ネタを続けて話してゆく話法です。これで結構人気が出ました。

ところがある日、兄弟子の笑福亭鶴光さんも同じように、小ネタを自分のラジオ番組の「オールナイト日本」で披露し、大受けしました。当時は、圧倒的に鶴光さんの方が有名です。そうすると世間は、無名の鶴瓶が兄弟子の鶴光のネタを真似したと言いました。自分が考えた事なのに、人気がないだけで理解されないことに大変悔しい思いをしたそうです。しかし、ここからが彼の偉いところです。では、絶対に他人に盗まれないようなネタを作ろう!いろいろ考えて彼は「自分の体験した事だけを話そう。」そう決心しました。

自分の体験したことは、すべてオリジナル。これは誰も真似ができません。鶴瓶さんの番組を注意深く聞いてみて下さい。必ず「最近、こんなおもろいコト、ありましてん。」から話が始まります。「体験したことには力がある。」と感じた、私の大切な話です。

親切な大工さん

ある小さな建設会社の話です。この会社は注文建築の会社です。この会社はさりげないのですが依頼主やご近所の方々が大満足され、記憶に残る素晴らしい対応をしてくれます。

あるお宅の建設中に近所からクレームが出ました。その建築現場の周辺にかんな屑や、釘が落ちていて近所の子供がひろって怪我でもしたら大変。また、建築業者の車が付近に違法駐車をして大変迷惑・・などなど。

建築会社は当然緊急対応をしました。現場の整理整頓、職人へのマナー教育の徹底。ただ、この会社はこれだけではありませんでした。週に一回、いつもよりも職人が早く帰れる日を作ったのです。但し、早く仕事は上がれるのですが、一つだけしなければならないことがあります。大工さんが、建設現場の周辺のお宅を毎回一軒ずつまわってご挨拶をする事でした。「向かいの注文建築をしています大工です。ご迷惑をおかけします。そのお詫びで、お宅の包丁を今研がせていただきます。」そういって近所のご家庭の包丁をプロの腕で研いでいきました。それがご近所で評判になり、建築会社の評判が上がってゆきました。

さらにその後、依頼主が引っ越してきてご近所にご挨拶に行くと、その話がでて、逆に感謝されるようになり、依頼主も大満足。ほんの小さなことなのですが、コミュニティーの中に溶の中に溶け込む顧客サービスというものの重要性を強く感じた話です。

二十一世紀の読み方──二つの先例

地球の歴史で人口が減少しているのにもかかわらずGNPが上昇した国家があります。それが日本だ・・・と。しかもそれは江戸中期。興味深い論文を見つけましたので、以下に引用します。—-

—人口減少社会とはどんな社会になるのか。参考にすべき先例が二つある。一つは、享保から化政期に至る、わが国の江戸中期。当時の人口は室町期以来の急速な増加が1730年ころに終了し、その後は約百年間停滞・減少が続いた。農業生産の伸びもほぼ飽和化したうえ、経済的にも元禄バブルの後遺症でインフレと財政悪化が同時進行し、社会・経済構造も停滞に陥ったからだ。にもかからず、この時代には、歌舞伎、浮世絵などの大衆文化、寺子屋、貸し本屋などの情報文化、蕎麦、うどんなどの生活文化まで、数多くの日本型文化が育まれた。つまり、人口が停滞し社会が安定していたが故に、文化や生活が爛熟し、農業文明に見合う成熟化社会が実現された時代だった。

もう一つは、20年も前から人口停滞を経験している欧州の先進諸国。例えばスウェーデン、ノルウェー、ベルギーなどの北欧諸国では1970年代から、またイギリスや旧西ドイツなどでは80年代から、人口が停滞している。いずれも西欧文明の主導国であり、産業構造や社会保障の進んだ国々だ。とすれば、人口停滞は先進国家に共通する現象として、社会の成熟度を示しているともいえる。これらの国々でも、人口停滞に伴って少子化と高齢化が進行し、産業の国際競争力の低下、経済の破綻、財政の悪化などに陥った。

だが、生活環境や社会福祉の面では、途上国が比較できないほど、成熟した社会が出現した。生活面でも、やみくもに働き、がむしゃらに消費する生活を卒業し、物質的な制約が強まる中でも、ゆとりと生き甲斐を見出す生活様式が作り出されている。二つの先例が示唆するのは、人口減少社会では、物量的には制約の多くなるものの、それが故にむしろ生活文化や情報文化が成熟する可能性が強いということだ。

(『調査農林統計』農林統計協会,2000,2月号より)

ーーーー江戸時代の日本型文化といえば、こんなことを空想しました。今、日本ではおよそ一人が一台の携帯電話を持っています。でも、この携帯という漢字はよく考えてみると、なんとも時代錯誤な文字です。「帯に携える」という環境は現在ではほとんどありません。おそらく着物を着ていた時代の漢字だと思います。

あの小さな画面に、自分の気持ちを表すために文字を駆使する姿は、俳句や川柳、短歌の文化に通じているように思えてなりません。メールにも言葉を略したり、絵文字を使ったりと創意工夫が見られます。ここは日本人の天才的な言葉遊びのDNAが息づいているのかもしれません。携帯電話は、世界最先端のIT技術だと思っていたものが、実は、意外と日本人にとって伝統的な古典技術の集大成なのかも知れません。

街を歩いていて携帯電話で話をしている人を見かけるのは少なくなりました。皆、携帯電話を前に構えてメールを読んでいます。最近の若いもんは言葉が乱れている・・・という話をよく聞きますが、ずっと昔から言われつづけている台詞です。俳句の歳時記でも毎年毎年更新され続けていますし、略語だって昔から溢れています。最近の女子高校生が「超感激!」とか「キモイっ!」などと言うのを、眉間にしわを入れて聞いている方でも「超特急ひかり号」とか、サラリーマン川柳を「サラ川」とかいうのはどうでしょう。

しかも、これらの日本人のDNAに刷り込まれた文化が発展したのも、前述の人口が減少しGNPが上昇した時代に重なるかもしれません。日本人特有のオリジナリティーを発揮し、独創国家を目指すチャンスなのかも知れません。

行きと帰りがある

今から20年以上も昔の昭和53年のことです。ある会社の社長のお話です。その会社はある新商品を開発しました。その商品とは紙パックに入った自然水です。今でこそ水は買うものとしてその地位を確立していますが、当時は日本で初めての商品でした。私は当時その自然水の開発にかかわり、様々な経験をさせていただきました。

商品は出来上がったのですが、苦労していくつかのスーパーマーケットを開拓し、店頭においていただくこととなりました。しかし、大きな問題がありました。運搬です。実は運搬が一番大変でお金がかかるのです。自分で各お店に運んでいくわけには行かず、運送会社と契約するのですが、これがお金がかかり、利益がなくなってしまいます。社長は一生懸命考えました。スーパーの前に立って、なにか良いアイデアが無いかを一生懸命考えたのです。

ある日、一台のトラックがスーパーの荷捌場に入ってゆくのを見つけました。そのトラックは不思議なことに、荷物を一切積んでいません。「荷物も積まずにこのトラックは何をしにきたのだろう?」 運転手に聞きました。「ああ、うちは空ビン屋(くうびんや)ですよ。」空ビン屋???そのトラックはお店に回収された空き瓶を回収して持ち帰る会社のトラックだったのです。だからトラックは空(から)でやってきて、空ビンを満載にして帰っていきます。社長はピンときました。

「よし!ここと契約しよう。この空ビン屋さんの行きの空っぽのトラックに自分の水パックを積んでもらって運んでもらおう。もともと空で行くのだから安く運んでくれるにちがいない。」そのアイデアは当たり、格安で運送に成功します。物事には行きと帰りがあり、どちらかに偏りがあるもので、この偏りを補ってあげることで共存共栄できるものなんだ・・・良い勉強させていただきました。