内海新聞 27号

クレームの多い料理

宮沢賢治の童話で「注文の多い料理店」という話があります。山で猟師が道に迷い、はらぺこでやっとたどり着いたレストラン。これが奇妙で、ウェイターも客も誰もいない。しかし、いろいろ自分たちに向けて伝言が書いてある。そこには、「どなたもどうかお入りください、決してご遠慮はありません。」さらに「鉄砲と弾丸(たま)をこゝへ置いてください。」「ここで服を脱いで下さい。」「体中にバターを塗って下さい。」「どうかからだ中に、壷(つぼ)の中の塩をたくさんよくもみ込んでください。」

結局、これは山猫が猟師を食ってしまおうといろいろ細工したものだったという話です。なかなか面白い話です。ココからは私の昔話です・・・もう25年も前の話です。

中華料理のレストランのコックをしていた時は、よく失敗をしてお客様から叱られました。その度に、この宮沢賢治の「注文の多い料理店」を思い出しました。こっちから、いろいろ客に注文できればどんなに楽か・・・でもさしずめ、今の自分は「クレームの多い料理店」といったところかな?・・・と思ったりもしていました。お客様は神様です・・・と三波春夫さんが言われましたが、私はとてもそうは思えませんでした。当時は「お客様は怖い人」と思っていました。攻撃されっぱなしです。お客様にもいろいろいらっしゃるので、いつも緊張の連続でした。想像も出来ないトラブルがいろいろありました。

以前に書きましたが「テーブルは裏から拭け!」の教訓となった白いロングコートのお客様。これはその前にこの席に座った家族連れの子供たちがテーブルの裏に酢豚のタレを塗って帰ったことが原因で、次に来られた常連のお金持ちのお客様の白い毛皮の何百万円もするロングコートが、真茶色になった事件です。でもこれは、一方的にこちらが悪いので、納得できる話です。雨の日に違うお客様の傘を間違えて持って帰った事件もありますが、これも気が付かないで間違って持ち帰られたということです。でも、いろいろ納得いかない事件もあります。私の店の向かいのお店は、うどん・そばの「あかつき」というお店でした。

そのお店は奥にお座敷もあり、靴を脱いで上がるようになっています。ある女性のお客様が帰る際に、自分の靴が無いと騒ぎ出しました。自分の靴は高級なロングブーツだったということです。しかし、そこに残されたのは、薄汚い疲れたブーツでした。絶対自分のではないと言い張ります。仕方ないので、お店のゴム草履を履いて帰っていただいたのだそうですが、お客様が言われるのが本当だとしたら、絶対履き間違えることは無いと思います。足の大きさとか、履き心地ですぐ判りそうなものです。また色も材質も違いますので、すぐに判ると思います。お店としてはなんともならないので、諦めてもらったそうでした。また、斜め前のお店で、「サンマミー」というカレー専門店がありました。ここの事件は奇怪です。お客様が注文したカレーを食べられていて、突然「あっ、針金飲んだ!」と騒ぎ出しました。カレーの中に針金が入っていたというのです。

でもカレーというのは、いろいろ入っているので丸呑みするような食べ方はできませんから、口の中で噛んでいれば、針金など、すぐに判りそうなものです。でも、本当に針金を飲んだと言い張ります。仕方なく、店長はそのお客様を近くの救急病院に連れていってレントゲンを撮ってもらいました。そうしたら、きっちり喉のところに針金が引っかかっているというのです。

店長は真っ青になりました。
「本当だった!どうしよう!」その時、担当のお医者様が、別室に店長を呼び出しました。「あの針金は変です。なぜなら、喉に突き刺さらないように両端を丸めてあります。多分自分で作った針金を飲んでからお店に行ったのだと思います。恐喝事件なのですぐに警察に連絡されたほうが良いですよ。」結局、この話はお医者様の言われたとおりで、警察のお世話になったそうです。

私の店でもありました。ある日曜日の夜、店はごった返していました。レジのところにお勘定を待つお客様が何人か並びました。ちょうどその頃、帳場を母がしていましたが、レジを打ち込むのが間に合わず、レジの前のテーブルの上に、お客様がプラスチックの勘定書きと代金を置いて帰られました。次のご婦人のお客様が、自分のプラスチックのお勘定書きをその前の人の代金の上に重ねて置いたのです。代金もお釣り銭の無いように添えてあったのですが、すぐ下にあった、その前のお客様の代金の一万円札をうまく抜き取りました。そして、さっさと出て行きました。

母は、それを見逃しませんでした。レジ打ちを止めて、通路に飛び出し、ダッシュしてそのご婦人を追いかけました。「お客様、その一万円札、お間違えではございませんか?」母のあまりの機敏な動きにすんなり、お客様も降参されました。

お父さんはココで待ってなさいっ!

先日、久しぶりにニューヨークに行って来ました。
ニューヨークはどことなく大阪に似ていて私にはぴったりです。さしずめ五番街が御堂筋です。北から南への一方通行で同じです。東隣りは、四番街とは言わずマディソン街といいますが、これが堺筋。南から北への一方通行。反対の六番街これも六番街とは言わすアメリカズと言いますが、これは四ツ橋筋ですね。ここも南から北への一方通行。道路は全部一方通行です。このように大阪の地形にそっくりで、この三本の道を覚えておくと、バスやタクシーに乗るときに、どの通りにでれば良いか全部の通りの向きが想像できます。ローカルな話ですみません。

またニューヨークの人たちは信号を守りません。ここも大阪人にそっくりです。JR大阪駅の前の大きな交差点で、みんな信号を守らないので、あと何秒で信号が赤から青に変わるかを表示するようにしました。これで、安心して信号待ちをするだろう・・・と。この信号は今でもJR大阪駅と阪急のビルの間にあります。しかし、結果は正反対でした。信号が赤の時、大阪の人たちはもうイライラして待っています。沸点に達しているといってもいいでしょう。目の前で信号が青に変わるまであと何秒とでると、信号が赤でも数秒前からフライングして歩き出します。以前より危険になったという噂も・・・。もう各自の責任に任せる他はありません。

ニューヨークにこんな大阪のような信号はありませんが、赤でも歩いてます。車が走っていてもです。吉本のやすしきよしの漫才ネタで、「信号が青の時は進め、黄色の時は注意して進め、赤の時は見つからないように進め」というのがありますが、ニューヨークでは警察がいようがいまいが、歩いてます。

日本では東京の方は信号を守ったり、電車に乗るときも並んでいますので凄いなぁと思います。関西人は電車は並びません。降りる人より早く乗ろうとしますのでドア付近は戦場です。とにかくニューヨークは大阪の匂いがします。ところで、先日、ニューヨークに行ったとき、H&Mというカジュアルの安売りのお店に行きました。男性用もありますが、ほとんどが女性用カジュアルです。スウェーデンからきたショップで日本にはまだありません。とにかく安いのです。そして、なぜか、バナナリパブリックの近所にお店があります。店は大流行で、レジと試着室はごった返しています。

多分2万円もあれば上から下まで全部揃うだろうな・・・と思いました。そのお店でさらに面白いなと思ったのが、入り口の左右に腰掛ける大きな椅子が二個置いてあることでした。ちょうど、左の下の写真の丸印のところです。30分くらい2階から見ていたのですが、ここに座っているのは、たいてい一緒に買い物に付いて来た親父です。

奥さんや娘さんはさっさと買い物に行ってなかなか帰って来ませんが、親父はここで、じっと座ってその帰りを待っています。多分親父は、一緒に買い物に付いて行っても、役には立たず、足手まといになるだけです。そんな奥さん方の気持ちを察してか、最初から入り口のところに親父と年寄り用の大きな椅子を用意しているのかも知れません。これで奥さんは安心して買い物できますので、お店としても売上げアップにつながるのかもしれません。あの椅子2個置くくらい、お店の経費としては安いものです。

アメリカ人の大好物「うなぎ」

先月ニューヨークの51丁目にある寿司清というお店に立ち寄った時の話です。
「うちの店はお昼は来ないほうがいいですよ。」と板前さん。なぜかと尋ねたら、ほとんど会社接待のお客様ばかりで大変混雑するのだそうです。意外と夜の方が空いています。寿司清のカウンターには日本とまったく変わらない同じネタが並んでいます。「これは日本からの輸入ですか?」と聞くと、数の子とか以外は全部アメリカで調達できるのだそうです。下準備で、日本と同じネタに仕上げることが出来るということ。

ところで、アメリカでの寿司人気ナンバー3を挙げて下さいと質問すると、第一位がダントツで「うなぎ」だそうです。第二位は、「ハマチ」です。そして第三位が「トロ」だそうです。とにかくオイリーなものが好きなのです。いつか、「うなぎ」と「アナゴ」を同じように寿司にして、どちらが好まれるかをテストしたことがあるそうですが、100%「うなぎ」の追加がきたそうです。アメリカで、「うなぎビジネス」は面白いかも知れません。特にあの甘たるいタレが決め手だそうです。ちなみに、そこには生きたうなぎは置いていません。全部さばいて、蒸した切り身ばかりです。そしてメニューも「eel」とは書かずに「unagi」とありました。