内海新聞 24号

先月、お花見で駒沢大学方面に行ったときの事です。早めに咲いた桜が満開です。その木の下にはゴザやダンボールを敷いてお花見の準備をしている方々で一杯です。毎年の恒例の風景です。ところが、そこに若いお兄さんが忙しく走り回っています。手には印刷された紙を持っています。よく見ると、注文のメニューを一生懸命配っています。出前の予約です。

いやぁ・・・!感心感心。なかなか効率的な商売をされています。ケータイ電話でも注文を受け付けるのでしょうか?「奥から3本目の一番大きなソメイヨシノの下の山田です・・・」とか。こういう商売を「けもの道マーケティング」と言います。「けもの道マーケティング」とは私のマーケティングの師匠である泉田豊彦さんが命名されました。この「けもの道マーケティング」に関して、次のコーナーでお話したいと思います。

走るコーヒーショップと「けもの道マーケティング」

以前、サンフランシスコに行ったとき、地元の投資家といわれる方々と食事をする機会がありました。そのときお会いしたのは、カリフォルニアで飛行機会社のオーナーをしている40歳の女性でした。「アメリカってすごいなぁ・・40で飛行機会社のオーナーか・・・!」私の感想でした。食事をしながらお話を聞いていると、シカゴにニュービジネスが出現した・・・というのです。アメリカというのは何でもビジネスにつなげる国民だと思うような話です。

シカゴは大都会でいつも車の渋滞が激しいところです。特にあるトンネルに入る手前などは大渋滞で動かないのだそうです。ドライバーはイライラして、クラクションを鳴らします。そこに発生したニュービジネス!数名の若者がローラースケートに乗って、車の合間をすり抜けて走ってゆきます。それぞれ背中に消火器のような形をしたボンベをリュックのように担いでいます。その先端からホースが手元まで伸びています。腰のところには紙コップが何十個も重ねてぶら下がっています。そうです、彼らは「走るコーヒーショップ」だったのです。ドライバーが運転席から手を上げると、彼らが走ってやってきます。腰から紙コップを一個抜き取り、背中のタンクから上手にコーヒーを注ぎ手渡します。代金をもらって走り去ります。

マクドナルドのドライブスルーとは全く逆で、客は渋滞で止まっていて、店が移動してゆく!すばらしい!こういう発想は大好きです。この話を聞いて10年以上前のニュースを思い出しました。大阪に「タクシーコーヒー出現」というニュースです。昔から大阪はタクシーの台数が多く、いつも空車ばかりです。そこに不景気が重なってさらに空車ばかりです。夜になると御堂筋という大きな通りでも二重駐車をしているので3車線もあるのに、一車線しか使えません。これは今も変りません。当時も同じ状況で、新大阪駅や大阪駅、なんば駅といった大きな駅の周囲には何重にも客待ちのタクシーが並んで待っています。全くもって邪魔なのです。

タクシーは、深夜も走らないと売り上げが上がらず、運転手は深夜の睡魔との闘いです。眠気覚ましに自動販売機で缶コーヒーを買って飲むのだそうですが、これは糖分が多く体によくありません。そこでそのようなターミナルを巡回してコーヒーを販売する商売を考えた人がいました。軽自動車の左のドアのところに「タクシーコーヒー」と書いたネオンサインを点滅させ注文があるとすぐその脇まで移動し、挽きたての美味しいコーヒーを紙コップに入れてくれます。各駅ごとにチームを決めて営業を仕掛けてゆけばおもしろいなぁ・・と思ってニュースを見ていました。

今回のシカゴの「走るコーヒーショップ」も発想は同じです。大阪のタクシーコーヒーがその後どうなったかは不明です。「コーヒーを飲みたい人が沢山いるところに出かけて行ってコーヒーを売る!」・・・なんとすばらしいビジネスでしょう。このような発想を「けもの道マーケティング」といいます。これは私のマーケティングの師匠である株式会社泉田事務所の泉田豊彦さんの理論です。(http://www.senda.com)「家族は一緒に住んでいるが、皆、毎日出かけていく方向は違っている。

ところが属性別に目的地を見ると同じところにやってくる。子供たちは学校に、勤めている人はオフィス街に、お年よりは病院に・・という具合に。それぞれの人達は各自、決まった道筋を持っている。まるでウサギや狐や熊のように、独自の道がある。いわゆる「けもの道」を人々も持っている。従って、この「けもの道」上にそれぞれの客層にあった、商店などがあると良い。そして、そのけもの道に罠を仕掛けると極めて効果が高いのである」(成美文庫「売れる発想ができる人できない人」より)今回の走るコーヒーショップも、ある意味で「アメリカ版けもの道マーケティング」といえます。もちろん後述のタクシーコーヒーもそうです。

このように、それぞれのけもの道を見つけ出すと、結構面白い商品展開が可能かもしれません。4月に入って、通勤電車の顔ぶれが変りました。いつもの常連さんがいなくなって、真新しいスーツに身を包んだ若者や見慣れぬ人たちが増えました。また、ここにも新しいそれぞれの「けもの道」ができてゆくことでしょう。

フルハルター

フルハルターとは、ドイツ語で万年筆のことです。
実は私は「隠れ万年筆コレクター」です。アメリカなどの街には必ず万年筆専門店があります。サインをする関係で万年筆は必需品なのかも知れません。日本で言えばハンコ屋さんのような感じです。万年筆は世界共通の完成された筆記具だと思います。色つきの水を表面張力で吸い上げて、適当な量が流れ出るように溝をつけた水性の筆記具です。

最初は、鳥の羽に割れ目を入れて、インク壷からインクをつけて字を書いていました。日本にも同じ原理の筆記具で「筆」があります。理屈は同じですが、筆は縦書きに適した筆記具です。一方、万年筆は縦書きより横書きに向いています。私はそんなに沢山の万年筆を持っている訳ではありませんが、一本一本こだわりがあり、何かの記念日に1本ずつ購入することにしています。現在全部で30本位です。

一番高価な万年筆は「パーカーデュオフォールド」のノーマンロックウェル仕様というものです。ノーマンロックウェルは今から80年くらい前に活躍された画家です。アメリカンクラシックという古き良きアメリカの日常を描き続けました。そのノーマンロックウェルにちなんだ限定モデルです。全世界で3500本だけ生産されたもので、ちなみに私の番号が2187番です。売り出し価格は20万円くらいでしたが、今はいくらになっているか判りません。このパーカーは横文字を書くために設計されていますので、漢字やひらがなには多少無理があります。そこでペン先の研磨をすることにしました。どうせするなら、ペン先の神様といわれる森山信彦さんにお願いしようと決めました。森山さんは長年モンブランの日本総代理店でペン先の研磨一筋で生きてこられました。そしてこのたび独立され、品川区大井町に「フルハルター」という万年筆のペン先研磨専門店をオープンされました。フルハルターのポリシーは4つあります。

●使い手ひとりひとりの手に合わせて丁寧に調整します。
●使用目的や万年筆を持つ位置を見て聞いてじっくりとアドバイスします。
●椅子に座ってゆっくりと試し書きのできるお店を目指します。
●心ゆくまで万年筆の話ができるサロンを目指します。
・・・・・の以上です。

そして、完成したものは「生涯保証書」が発行され、いつでも調整してもらえます。(ただしこの生涯保証書は森山さんが仕事が出来る間だけ、というものですが・・・)私は、このパーカーデュオフォールドを持ってお願いにあがりました。お店は椅子が2つと小さなテーブルだけの本当に狭いお店でした。まさに職人という感じの森山さんは万年筆を見ながら色々お話いただけました。「パーカーのキャップは密閉度が悪くて、キャップをしていてもすぐペン先が乾いてしまうのですよ。だから最初の書き出しはかすれた感じでインクの出が悪くありませんか?ではこの紙にいつも通りの書き方で住所と名前と電話番号を書いてください」それを森山さんは注意深く見ていました。「大体癖が判りました。その癖にあわせてペン先を研磨しましょう。1ヶ月預かります。費用は8000円ですが宜しいですか?」プロフェッショナルだ!!私にとっては、とても気持ちの良いひと時でした。

http://members.jcom.home.ne.jp/fullhalter/index.html

The Book of Answers

「The Book of Answers」という本をご存知でしょうか?
東京のJR総武線市ヶ谷駅の駅前にある「文教堂」という本屋で立ち読みしていた時のことです。私の後ろに雙葉学園の女子高校生が10人くらいでやってきました。彼女達は私の肩越しに「これこれ、今すごい流行ってるよねぇ!」「そうそう私も買ったよ!」「「私も!」「占いよりも当たるよ!コレ!」・・・

「何?!流行ってる?当たる?!」思わず耳がダンボになってしまいました。横目でどんな本か見ながら、でもすぐ手を出すと何か恥ずかしいし・・彼女たちが立ち去るのを待ちました。そして、あたりが静かになってから、その本を手に取りました。

それが「The Book of Answers」です。要は、開いたページにいろいろな答えが書いてあるのです。

「もちろんです」とか「喜びを満喫しなさい」とか「今、まさにこのとき」とか・・・。すべて、有名な小説などに登場する台詞です。著者はキャロルボルトさんというシアトル在住の画家です。

表紙のサブタイトルに「開いたページにあなたへの答えがある」とあります。何か悩みごとを想像しながら、この本の好きなページを開くと、それが今のあなたへの答えだということです。ピンとこないまま購入しました。1400円也・・・高い!それを会社に持ち帰り女性社員に見せました。そうしたらすごい反響で、数名がすぐに買いに行きました。一方、男性にみせると、全員無反応・・・「へぇ~」で終わりました。

同じ本なのに、男性と女性の反応がまるで正反対なのがすごく面白く感じました。さっそく社内で女性社員にインタビューを試みました。実際に重い悩みでやってみたら、答えがまさに当たっていたと興奮ぎみです。

詩集のようで占いの要素もあるのだそうです。「女性は、よく誰かに相談したり聞いたりしますが、大抵は自分の中で答えが決まっていると思います。なので、自分でどうにでも解釈のできる“答えの本”の様な存在は、好きなのではないのかな?」とは彼女たちの弁。とにかく男性と女性ではっきり差の出た結果となりました。