内海新聞 19号

毎回毎回、徒然なるままに好きなことを書いておりますが、自分の目で見たもの、自分の耳で聞いたものをなるべく書こうと思っています。
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ちなみに、YAHOO!で検索して出てくる内海新聞は偶然にも同名ですが、全く別のもので一切何の関係もございません。

スーパーマン型サラリーマンとインディージョーンズ型サラリーマン

作家の中谷彰宏http://www.an-web.com/さんの著書に「スーパーマン型サラリーマンとインディージョーンズ型サラリーマン」について書かれた一節があります。大変興味深い内容だったのでよく覚えています。これからのサラリーマンは二つの仕事をもって生きていっても良いのではないか?・・・という提言でした。そして、その形態には2つのタイプがあるそうです。
ひとつが「スーパーマン型サラリーマン」です。
主人公のクラークケントの本業は新聞記者です。そして、もうひとつ職業を持っています。それがスーパーマン。しかし、クラークケントが新聞記者だと言うことは誰もが知っていますが、スーパーマンだという事は誰も知りません。

一方、「インディージョーンズ型サラリーマン」とは、スピルバーグ監督でお馴染みのアドベンチャー映画のジョーンズ博士です。博士は考古学の学者ですが、もうひとつの職業は探検家でもあります。人々はジョーンズ博士が学者と探検家という二つの職業を持っている事を知っています。

いまサラリーマンが本業以外に職業を持てるのかどうかは、就業規則の関係もありますので、可能かどうかは不明ですが、就業時間以外に別の仕事を持つ事は別に悪いことではないとも思っています。ただ、就業時間以外の仕事をオープンにするか、極秘にするかということはあるかもしれません。電通の社員であり作家である新井満さんや第一勧業銀行の支店長でかつ歌手だった小椋佳さんはインディー型。これからはこういう二束のわらじ型のNewサラリーマンが沢山誕生するかもしれません。ただしスーパーマン型は、水面下にいるため、実態調査ができず計測不能。

1988年 社外ブレーンサービスと求人雑誌「職前職後」企画

私が、ジンテックを創業した時の当初の事業は、「スーパーマン型サラリーマン」を集めて企業に派遣してゆくものでした。1988年の企画です。当時は、「スーパーマン型サラリーマン」というような呼び方ではなく、私は「社外ブレーン」と名付けました。私は、学生アルバイトを雇って、新宿や渋谷や横浜の駅前でチラシを撒きました。

「社外ブレーン募集!就業時間外に自分の能力を試してみませんか?」そういう内容のチラシを何百枚と撒きました。どれくらいの反応があるかは、全く不明でした。驚くことに、あんなチラシでも一流企業の方々が数多く集まってきていただけたのです。この仕掛けは以下の通りです。アグレッシブな方々をあつめて登録してもらい、専門分野別にデータベースをつくります。企業では本業以外の新規事業分野での人材不足や、本業であっても人材のスキルの不足を補充したいとか、その必要なノウハウだけを利用したいという企業ニーズが結構あることに気付きました。

企業からあるプロジェクトに関する専門家のアドバイザーの依頼があるとデータベースから5名~10名人選します。彼らを「社外ブレーン」と呼びます。指定された日時(就業時間以外)に集合し、グループインタビューを行っていきます。そのインタビューのメンバーには社外ブレーンのほかに、その依頼の企業の担当社員も混じっています。専門的な立場、あるいは既に経験済みの体験談を交えて情報交換が行われます。「社外ブレーン」の方々は毎月数回のこのようなグループインタビューに参加していただきます。数回のインタビューに参加した後、そのままその依頼企業に転職していった方々もいらっしゃいますが、これは就業の自由で誰も阻止はできません。

本人にとっては、今の会社を辞めずにいろいろな会社の中を体験できるという事で非常に好評でした。また依頼企業も社内の会議では遠慮して出てこない様な忌憚のない意見も聞けるという事でこちらも好評でした。募集して判ったのは応募されてくる社外ブレーンの方々の年齢です。この年齢の殆どが27才だったことに大変驚きました。入社して5年目。既に会社の仕事も覚え、自分の将来も見え始め、やりたい仕事に就けないでストレスが溜まる時期です。自分は何なのだろう?と自問自答し始める年齢です。彼らの興味はもうすでに社内にはなく、社外の同じような年齢の方々も同様に悩んでいるのか?という事に最大の興味をもち始めます。しかもまだ独身者が多く、人材としての価値が高いことも知っている年齢です。彼らは、自ら転職活動はしません。人からの誘い以外に興味がありません。そんな特殊な年齢層だったのです。

その後、社外ブレーン求人情報誌「職前職後」というのを企画しました。各企業の社外ブレーンの募集広告を一冊にまとめ、葉書で応募するリクルート方式の雑誌です。しかし、丁度この頃から、別のテレマーケティング事業が忙しくなり、この事業はお蔵入りとなりました。

疑うことはコストがかかる

私は以前、ある方に「疑うという事はコストがかかるのですよ。」と教わったことがある。
旧ソビエト連邦では、計画経済を採用していました。計画を守らせる、約束を守らせるために、必ずそれを見張る見張り役という者がいるのだと・・・そして、その見張り役を見張るさらに見張り役という者がいる。さらにさらに、その見張り役を見張っている見張り役を見張る見張り役が存在する。だんだんややこしくなってきましたが、一言で言うと、しっかり仕事をしているかどうかを監視しなくてはならなくなり、永遠にそれを監視し続けるメビウスの輪のような連鎖ができあがってゆくのだといいます。つまり、疑う事はコストがかかるのです。

一方、自由経済ではどうでしょうか?本人の責任で自由に競争する事ができます。自由に競争するという事は、倒産する事もありますが、あくまでも本人の責任のもとで行われます。本人の責任のもとに競争する事は、コストをかけずに効率を目指すわけですから、社会全体でみてもコストはかからないのです。人間社会は信じあうことから成立するものなのかも知れません。

企業競争の中では、相手の裏をかきながら競争を続けることになりますが、仲間同士では、信じあうことが一番大切であり、経営的にも一番コストがかからない方法です。一方、IT技術の発達やインターネット社会になって、非対面でのビジネスが急増しています。最初から最後までお客様の顔を見ずに取引が成立するという事が起こっています。通信販売がこれに近かったかも知れませんが、今は様々な分野での非対面化が進んでいます。

ネット銀行・ネット証券・ネット通販・・・・将来的にはお役所の住民票や婚姻届もネットで受け付けようという計画が進んでいます。ネット社会になって、これまで対面のビジネスの中でカバーしてきた認証というものが成立しなくなり、様々な何重ものチェックで本人かどうかを確定してゆく・・・・いわゆる「疑うシステム」が必要になってきました。そのためのコストが莫大となり、事業自体が採算が合わなくなっているともいいます。まさに「疑う事はコストがかかる」です。インターネット社会は「発信者責任」といって、自らを自らが証明しなければなりませんし、匿名というものは許されません。これを無視すると、信用というものが成立しなくなってしまうからです。

インターネットを利用する場合、主催企業は、この応募者が必ずその本人かを確かめることばかり考えがちですが、利用者からみれば、本当にそのサイトが存在するのか?とかを心配しています。お互いが疑いの目を持って相手を見てるのかもしれません。そうしたら、本当に良いものであっても、額面より低い印象でとられてしまうかも知れません。

フェデックスという国際宅配便会社は必ずアメリカのメンフィスに一旦集めて出荷されます。そして一番最後の送り先チェックは人間が一件一件、目で確認するそうです。これが一番確実で安いのだそうです。最後に信用できるかどうかは、どこかに人間の手が介在することなのかも知れません。ネットで飛行機のチケットを予約しても、受け取るまで心配です。でも予約の時、どこか途中で「担当の**が承りました。ありがとうございました。」と人間が登場すれば、結構安心できるものです。

あるホテルの風景

東京の赤坂プリンスホテルの新館から別館の渡り廊下を私は急いで歩いていました。前方の階段を高齢の老人が杖をついて一歩一歩ゆっくりと上がっているのが見えました。その横にその奥様と思われる方が見守るように一緒に歩いています。

丁度その時、二人の男性がすれ違いざまに立ち止まって老人に声をかけました。
「大丈夫ですか?大丈夫?」
老人は「だいじょうぶ」と言って頷きました。
私は、そのご夫婦に追いつきました。

その時、フロントにいたその息子さんらしい方が走って駆けつけました。
「おやじ、今なにか言われたの?」
「いいや、大丈夫か?って」
「それで?」
「大丈夫ですって・・言ったよ」
「だって、今の人はお客さんだろ?ホテルの人じゃないよね?」
「みんな、優しいねぇ」奥さんが呟きました。
私は、その言葉を聞いて「今日は良い日になりそうだ・・・」と思いました。人と人との関わりの美しい瞬間を垣間見たような気がしました。