内海新聞 16号

新起業家時代 失敗のすすめ

先日、友人がこんな話をしてくれました。
数年前に上映された「アマデウス」という映画の話です。天才作曲家「モーツァルト」の生涯を描いたものです。当時ヨーロッパの音楽家は宮廷音楽家といって、国王や女王や教会のお抱え作曲家でした。国王や司教からこんな曲をつくれと命ぜられて、言われるまま作曲するという縛られた音楽活動だったといいます。そんな頃、自分の考えで自由に作曲したいというベンチャーが登場します。それが「ベートーベン」です。古典派からロマン派への足がかりをつくりました。多くの新進作曲家たちは、街の酒場に集まり、既成概念にとらわれない発想で、これからの音楽の夢を語り合いました。天才バッハの影響を受けたモーツァルトやベートーベンをはじめ、ショパン、シューマン、ブラームスなど、数えきれないほどの大作曲家たちが誕生してゆきます。

今、日本においても、ネットベンチャーやITベンチャーといわれる若くて夢いっぱいの起業家が数多く誕生し、様々なところに結集し夢を語り合っています。ソフトバンクの孫社長はバッハなのかもしれません。彼の影響を受けて、そこに続けとどんどん集まります。構造改革真っ只中の日本で、渋谷のビットバレーの起業家と、200年以上も昔のヨーロッパの新進作曲家達がオーバーラップするのは、まんざら突飛な発想でもないような気がします。100年後200年後の小学校の教科書に名を連ねるような偉大な経営者達がこの中から続々登場するのかもしれません。

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新起業家時代というテーマで、原稿を書き始めたのですが、ふとこんなことを考えました。起業家というのは成功することを望んで日々頑張っています。でも失敗する事の可能性も高いわけです。だからベンチャーといえるのですが、逆に失敗を積み上げて創ってゆくビジネスモデルがあってもいいのではないのか?なんて思ったりもしています。「新起業家時代・失敗の勧め」です。手前味噌な話ですが、私の創業も失敗の連続でした。打つ手打つ手が裏目にでてしまう。負け癖がつくというのでしょうか?だんだん臆病になっていく自分がいました。今この仕事をやるべきかどうかの判断基準がないのです。経営理念が固まっていないのです。困ったときに一体どの方向に進めば良いのかという指針がありませんでした。GOかSTOPかの「ものさし」がないといえば良いのでしょうか?

しかし、会社の創業期は皆そうなのだと思います。闇雲に着手して、予定通り進まなかったり、クレームになったりして、自信喪失になっていきました。その時、私は失敗しないようにどうすれば良いのか?とか、お客様に喜んでもらうにはどのようにすれば良いのか?という事ばかり考えていました。そして、クレームは一番の恐怖でした。ところがある日、このクレームというのはどういう事なのだろうと考えました。昔いつも考えていたテーマでした。「約束したことが、一部守られていない事への救難援助の声」という事だと思い出しました。実は、このクレームの中に顧客の本音が隠されているという事でした。

顧客の「不満」を一個一個つぶしてゆき、「安心」に転換してゆくことが、最も的確な顧客満足であり、商品開発でありマーケティングなのだという事を知りました。失敗した時に発生するクレームを裏返していくと、それは顧客のニーズとなり、どこにも真似のできないビジネスモデルを創れるのではないかと思ったのです。おかしな話ですが、私の会社では、クレームを起こした社員には「報奨金」が支給されます。「えっ!?」と思われるかも知れません。顧客ニーズの種を発見したという事で報奨金が出ます。

それまでは、クレームが発生しても担当者レベルで示談にしたり、放置されたりと、闇から闇に葬られていました。報奨金を出すことでオープンにされ、ピンチがチャンスに変換できます。そして、逃げないでチャレンジするという行動を生み出します。現代は、様々な歪みや矛盾が噴出しています。

世の中は変革の嵐です。いうなれば社会全体がクレームの嵐という事になりますが、これは街中にビジネスニーズが溢れ出していると言えます。「こうしてほしい!」という救難援助の声です。まさにビジネスチャンスは目の前に転がっている訳であり、すなわち、これは「新起業家時代の幕開け」といえるのではないでしょうか?

時間を売る

昔、飲食のお店をしていたとき、休みの日にときどき近所の喫茶店にコーヒーを飲みに行きました。
280円のブレンドコーヒーを飲みました。たまの休みですので、ゆっくり雑誌を読むのが唯一の楽しみでした。雑誌も読み終わり、暇なので周りをきょろきょろしていると様々なお客様がいることに気付きました。私のように雑誌や新聞を読んでいる客、誰かと待ち合わせをしているような客、商談している客、友人とおしゃべりしている客・・・皆それぞれのシーンがあります。でも・・・私も含めて何か変です。ここは喫茶店です。おいしいコーヒーを出すお店なのですがコーヒーの味を楽しんでいるようなお客はいないようです。実はこの私もそうです。私はここに何をしに来たのだろう?確かにコーヒーを飲みには来たのですが、本当はここにいる時間を買いに来たのかもしれない・・・・・そう思いました。他の人もそうなのではないか?

ここで人と待ち合わせるために来店したとか、おしゃべりするために来店したとか、そういう利用は確かに多いです。喫茶店というのはコーヒーを売るふりをして、実は時間を売っているのかも知れない・・・そう思ったものです。

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お店をして10年位したころ、知り会いから大阪で喫茶店の売り物件があるので買わないかとお誘いがありました。場所は大阪の北浜という、証券会社が立ち並ぶ兜町のようなところです。30席くらいのカウンターと小さなテーブルがある喫茶店です。立地はとても良いのです。お昼どきには大変混雑しますが、それを過ぎるとほとんど客は来ません。お昼が稼ぎ時ということです。ところが、お昼の客は昼食後のコーヒーなので、回転がとても悪いのです。なかなか帰ってくれません。

お店の売上を上げるには、客席を増やすか、商品の価格を上げるかしかありません。客席を増やすといっても、お店の大きさは決まっているので、店を拡張することになります。家賃や経費がその分増えてしまいます。商品の値段を上げると、大阪の客は敏感に反応して、逃げてしまいます。さて困りました。そこで、あるアイデアを考えたのです。

コーヒーを全部無料にするとどうだろう。そして、その店の中にいた滞在時間に対して課金するのです。入場に150円あとは1分毎に20円という具合です。そうです。このお店の時間を売る仕掛けにするのです。だからコーヒーは無料です。入口にタイムレコーダーを何台かおいて、タイムカードを150円で買ってもらいます。席が空くとガチャンとタイムスタンプを押して入場していただき、出るときにもう一回ガチャンとタイムスタンプを押してもらいます。1分単価の計算式を機械に仕込んでおけば、総時間の料金が自動計算されます。こうすると、計算高い大阪の人は、いかに一杯のコーヒーを安く飲むかを競いますのでさらに回転が早まります。

最初の150円に原価プラスαが含まれますので、いくら回転が上がっても損はしません。流行れば流行るほど回転率が上がります。この北浜のお店は条件が合わなかったのと、私が中華料理店を閉めて人材会社に行くことになったのでこの話は流れました。この企画は、お蔵入りになりましたが、東京のオフィス街のレストランのお昼のイベントとしてやればきっと大当たりするだろうと、今でも思っています。バイキング方式にして料理はすべて無料。そこにいる滞在時間に対して支払う勘定です。一度にお店に入れる人数を制限しておけば安定して回転してゆきます。またいつかチャンスがあれば・・・なんて。

私が料理店を辞めた理由(1)

私は昭和60年8月31日の日曜日で中華料理店を閉めて、翌日の9月1日の月曜日から、人材会社に勤める事になりました。

なぜ、お店を閉める事にしたのか?いろいろ理由はありますが、もっとダイナミックに自分のアイデアで勝負してみたかったのかもしれません。第11号でも少し書きましたが、当時、私は宝塚市にある駅前のショッピングセンターの1階で飲食店をしていました。当時ではよく流行っている方だったと思います。しかし、隣の駅にもおなじようなショッピングセンターができ、反対側の駅にも同様に大型ショッピングセンターができる計画でした。しかもバスターミナルが隣の駅なのでさらに、客の流れは変わってきます。

ビルの管理会社が販売促進をしていましたが、でてくるアイデアはいつもバーゲンばかり。年2回が3回になり、4回になり・・・安売りをすると、もうお客はその時にしか財布を開けません。バーゲンのときには、各店舗は協力金として毎回何万円も拠出しなければなりません。私は管理組合にひとつの企画書を送りました。それは、安売りではなく、どうしてもこのビルに足を運ばなければならないような仕掛けづくりをすることでした。その秘策とは・・・・すみません。スペースの関係で続きは17号で。