新・内海新聞119号

【ハレとケ】

以前、概要を書きましたが、今回はもう少し詳しく「ハレとケ」を書きます。
ハレとケは良く聞く言葉ですが、はっきりとはわからない。ハレとケは、日本人の生活の中に確りと定着した一つのリズムです。柳田國男が定義したと言う説もあります。
まずハレ。fareです。
ハレとはお祝い事の時に良く使われる言葉です。
ハレの日、ハレの門出など。滅多になく、きわめて晴れ晴れしいこと。つまり非日常の行事です。
この、滅多にない日のために、長い時間をかけて準備します。そして、そのハレを様々な人たちとともに祝う。実に集団的です。
次にケ。Qeです。
この言葉は殆ど普段では使われなくなりました。
ごく普通の繰り返される毎日のこと。
つまり日常の平凡な行事です。
普段の生活の大半は「ケ」であり、たまにやってくるとても楽しい誇らしい事が「ハレ」と言う事です。
農業国家である日本では、夜明けとともに鍬を持って野良仕事に出かけて、夕暮れとともにカラスと一緒に帰宅。雨の日も風の日も、その行動は変わらず毎日毎日同じ事の繰り返し。これが「ケ」。個人的行動の積み上げです。
ところが、秋の収穫が終わったところで、村祭りが準備され五穀豊穣を感謝する。山車が出て、ご馳走が作られ酒を振る舞う。これがハレ。または、婚礼が行われる時は、村を挙げて全体でお祝いをする。これも「ハレ」。
退屈な日常の中にたまに竹の節のようにハレの行事がやってくる。


以前、黒澤明監督が亡くなった後、黒澤組が製作した「雨あがる」と言う映画がありました。
歌謡曲(ルビーの指輪」が大ヒットした寺尾聡さんと宮崎美子さんが夫婦役で出演しています。ある大きな川が長雨で増水して渡る事ができず、手前の安い宿屋に偶然居合わせた旅人たちが何日も雨が止むのを待つと言う映画。何日も何日も、窮屈な宿の中で大勢の旅人たちが詰め込まれ、ストレスが溜まり、自分のものが盗まれたと喧嘩が始まる。それを見かねた寺尾聡扮する剣豪の浪人が幕府に禁じられている賭け試合で道場破りをしてお金をつくり、贅沢な食材や酒を買い、宿屋の商人や農民の泊まり客に振る舞い、大いにストレス発散をしてやる。飲めや歌えの大宴会が始まる。喧嘩していた人達も笑っている。その中にこんなシーンがある。
俳優の松村達雄さん扮する説教節の爺さんが、「あ~、こんな日が年に一度もありゃあ、どんな苦労でも耐えられるのに…。」と、ポツリと言う。これこそ「ハレとケ」です。辛いケの生活が続いても、たまにハレがあると、また頑張れる。ハレというのは、日本人にとってとても大切な節目なのです。
このハレの前には日本人は無抵抗。もう全面降伏なのです。さて今の日常生活の中でも「ハレとケ」が存在します。
特に「ハレ」は、時代が変わっても同じように大切な日日常の行事です。
この現代の「ハレ」を分析すると大きく分けて7つあります。
この7つの「ハレ」は、ほとんどの日本人が同じようなことを考え、同じような行動をとるのです。
ここで、話が少し横道に逸れますが、「けもの道マーケティング」というものがあります。
例えば猟師が鉄砲を担いで山奥に入っても、そう簡単に獲物は獲れません。けもの達の方が、土地勘があり、すばしっこく、そう簡単に姿はあらわしません。そんな時、猟師はけもの道を探します。
けもの道とは、その山に住む鹿や熊や猪が毎日毎日使う安心できる抜け道です。けもの達が安心して歩くけもの道。そのけもの道に罠を仕掛けるのです。
高確率で仕留める事ができるそうです。
この7つの「ハレ」は文房具屋さんのご祝儀袋のコーナーの区分けです。葬式は毛色が違うように思うかも知れませんが、これもご祝儀です。
話を戻すと、「ハレ」に関しても、無条件の絶対服従の行動だとすると、そこに何かの仕掛けを作ると、その反応は高いということになります。この7つの「ハレ」とは、日本人の人生の中で大切な節目です。
①誕生 ②進学③ 就職 ④結婚 ⑤住宅 ⑥定年 ⑦葬式の7つの「ハレ」です。
まず、①誕生ですが、誕生する本人ではなく、その両親ということになります。「どうか健康で生まれてほしい。」という思いが何よりも最優先です。
次に②進学。今では保育園や幼稚園から受験があるようですが、大学受験まで続きます。この時の受験生の志向は、「合格」です。
③就職。これは新卒就職です。
「内定」に向けて学生達が動き回ります。
④結婚。これは結婚生活ではなく、結婚披露宴です。「披露」です。


女性が中心に回りますが、この瞬間のために時間とお金が費やされます。
⑤住宅。これは、改めて「家族」を意識する時期となります。
家族の部屋だったり、家族が集まるリビングだったり部屋を通じて家族を意識する時期です。
⑥定年。「第二の人生」を意識する55歳あたりからこの時期になります。
⑦葬式。これは、人生の「記念」です。ここは、新しいことを創造することより、これまでの人生の振り返りとして死を意識し始めます。
これらの「ハレ」の時期は、大体の年齢は想像がつきます。
大体の時期が判り、且つ求めている志向ニーズが判る。
つまりここに人生のけもの道が存在する。
誕生には健康の為に投資をし、受験には合格の為に投資をし、就職には内定の為の投資や行動をし、結婚には披露に投資をし、住宅は家族に対する意識が上がり、定年には今までできなかった事への投資や第二の人生へのニーズの高まり。葬式は、死を意識する事で、残りの人生への健やかに過ごすという生活習慣への意識や、自分自身の人生への振り返り。
罠を仕掛けるというと言葉は悪いですが、求める人に求めるものを与える事は重要。
特に「ハレ」の時期は、金銭感覚が麻痺する。安売りや値切りという事がほとんどない。
これを「ハレの日マーケティング」と名付けました。
これまでの様々なビジネスモデルをこれら「ハレの日」のタイミングに合わせてゆくことで新たな市場が生まれる可能性があります。