新・内海新聞118号

~トラブル回避の秘策~

かなり、昔の体験談です。
その頃は、まだ就職支援のテレマーケティングが業務の中心でした。テレマーケティングは、トラブルが付き物です。音声だけで情報をやりとりする訳ですから、言い間違い、聞き間違い、勘違いが必ず起こります。
テレマーケティングの内容は、新卒予定の学生さんに、就職セミナーの案内を電話で行う業務です。
少し余談になりますか、あるエピソードをお話しします。
この事業をスタートさせた頃、人材採用の専門家に指摘されたことがあります。電話なんかで人材採用など不可能。
就職雑誌などで興味のある学生の資料請求ハガキを母集団として数多く集め、そこから厳選し上澄みだけを絞り込む。これが良い人材を採用する秘訣だ……と。
しかし、それができるのは社名の通った有名企業だけの話。一般企業は無理、そう感じていました。
採用側から発想するのではなく、学生の目線で企画を進めるのが大切と考えました。
就職活動を始めた学生さんは当初は何もわからず、勢い業種も関係なく手当たり次第に応募し、ことごとく落とされ絶望の淵に立たされます。
第一志望、第二志望、第三志望…第十志望あたりまで、順位がつけられています。
そのなかの、第五、第六志望あたりは、関心も低く、積極的な志望企業ではないのです。
テレマーケティングで第五、第六の位置をキープする。つまり記憶に残すという戦略のもと、頻繁に電話をします。
やがて、第一、第二、第三志望と、内定がもらえず、第五第六志望の順位が上がってくるのです。
そして、第五第六だったものが、その学生にとって第一第二志望まで上がります。その時の判断基準は、記憶に残っている企業なのです。そして、優しく手を差し伸べ見守ってくれた企業ということになります。経験上、もうこの時は、知名度や企業規模ではなく、上記のような基準が最優先されます。
結果、中小企業に向けての就職テレマーケティングは、有効であるという結論になりました。
さて、話を戻します。

テレマーケティングはトラブルが多い…という話の続きです。
どういうトラブルが多いのか?ということですが、言い間違い、聞き間違い、勘違いが多い。
企業名を間違える。
説明会の日付を間違える
説明会の会場の場所を間違える
電話する大学を間違える
などなど、ゆっくりと落ち着いて話せば大丈夫なのですが、ひとりで1日に100件200件も連続で電話を掛けるので頭が混乱してきます。しかも、電話を掛けるオペレーターは大学一年生や二年生、あるいはフリーターの皆さん。就職経験のない人たちです。繁忙期はなかなか十分な研修もできず、すぐ現場に投入することになり、こういうことが起こります。しかし、このようなトラブルが起こるもう一つの大きな要因があるのです。
むしろ、そのもう一つの要因が、多くのトラブルを誘発すると言っても過言ではありません。
それは、採用状況によってクライアントである人事部の方針が頻繁に変更になるのです。
思ったほど学生さんが集まらない、集まり過ぎた。この日のセミナーは突然社長が出席することになった。セミナー会場を変更したい。女子学生をもっと増やして欲しい。◯◯大学をもっと増やして欲しい。などなど。
これらの要望は付き物で折り込み済みなのですが、問題はその突然の依頼の方法です。
一番多いのが電話。
次が、営業を呼んで口頭で伝える。
FAXが届く。
です。
現場の作業は連日大混乱ですので、電話のメモを紛失したり、FAXを破棄してしまったり、営業が現場に伝えるのを失念したり…
また、ほかにもまだまだありました。
連日、空き時間に対策会議をしますが、必ず抜けが出るのです。
失念や紛失に関しては、連絡ノートを設置したり、FAX箱を設置したり、確認担当者をきめて、漏れがないように巡回させたりしました。
それでも、漏れは出てきます。
事故が起こってから、後から追いかけるということが多く、対症療法的なのです。トラブルが起こる前に予知する方法を考え出さねば、根絶はできない。結局、トラブル予知の方法を各自で考え発表することになりました。
しかし、それは無理でした。統計学を駆使して、傾向値を分析する…ということは机上では可能でしょうが、現場ではパターンが多過ぎて不可能です。
これまで起こったトラブルの報告書の束をいつも持ち歩き、何十回と読み返しました。
読めば読むほど頭が痛くなり、恐怖心が大きくなってきます。
これから、受注がさらに増えれば、同様にトラブルも桁が上がり、社員が疲弊して倒れてしまう。
打つ手なし状態でした。
文面を読んでいても、何もわからない。
しかし、その後このトラブルの裏にある背景を考えていなかっことに気づきました。
報告書の行間を読む必要があると思いました。
それからさらに一週間ほど読み続けていると、ある特徴を発見しました。
共通した背景を見つけたのです。
そして、そのトラブルが発生する傾向を抜き出しました。
①電話での依頼
②3ヶ月以上ブランクのあったクライアントからの再発注
③クライアントの担当者が変更
④当社の担当者が変更になった
⑤直前の変更
⑥口頭での依頼
⑦FAXだけの依頼
⑧新規顧客からの依頼
⑨当社に新人を投入した   などなど。
これらがあると、必ずトラブルが発生すると言うわけではありません。
しかし、トラブルには必ず上記のような背景があると言うことでした。
これらの項目を「ヒヤリハット項目」として、大きく紙に書き、事務所に張り出しました。
もしも、これらの現象がある場合、必ず3回確認をして上長に報告すること!と言うルールを作ったのです。
これで、トラブルが減るのか?不安でしたが、その結果、トラブル数は5分の1に大幅に減少したのです。
結果的に、トラブルを予知したと言うことになりました。
確認の作業は大幅に増えましたがトラブル発生による後ろ向きな作業ロスが、減ったことは利益拡大、信頼獲得に大きく貢献したことは確実です。
このことは、大きな教訓を与えています。
人がすることには、必ず傾向があるということです。
その人の行動には癖があり、ミスをする人は同じところで必ずミスをする。
そして、そのことに気づいていない。
それから、人は一種のリズムを持っていて、そのリズムの中で生きています。
何らかの理由で一旦リズムが狂うと、異常行動を取ってしまうことがある、ということです。
これは、様々なところでも応用が効く法則だと思います。