新・内海新聞111号

【靴磨き屋さん顛末記①】

2012年、東京駅前で靴磨きと靴修理のテストマーケティングを始めました。皆、何やってんの?って感想だと思う。思い立ったら吉日。事業ってそんなもの。今回の靴磨き事業は大変大きな収穫を得たと思います。その貴重な体験をやはり皆に伝えておかないといけないと思い、ここに記録しておきます。

そもそもこの発想の原点は今から10年も遡る。テーマは「困っていることを助けることがビジネスになる…」です。それが何故靴磨き?!ですが、詳しく書いていきます。
ジンテックでの私の席は窓側の一番後ろ側。社員の姿が見渡せるところにあります。後ろ姿が良く見える。
ある日、あることに気づいたのです。女子社員たちが出社すると、履いてきた靴を脱いで足元のお手製の棚の上に揃えて置き、サンダルに履き替える。しかも皆可愛いグッズで靴をしまっている。細長いキリンの首のクッションをブーツの中に入れて、型が崩れないようにしたり、素敵なケースにパンプスを入れていたり、可愛いフルーツのクリップでハイヒールの両足を留めて倒れないようにしたり、私は毎日それらを見て「可愛いなぁ…」とニンマリするのが日課でした。彼女たちの素敵な靴たちはそこで勤務時間中ずっと仮眠をとっています。なるほど…。一方、毎日クロネコさんや佐川さんが定期的に荷物を取りにやって来る。ありがたい。いつも来るお兄さんは同じで、すでに顔なじみ。「今日もご苦労様です!」なんて書かれたトレーにキャンディーなんか入れて、ご自由にどうぞと気配りしたり。
待てよ。机の下で仮眠をしている彼女たちの素敵な靴たちを、勤務時間中を連れて行って綺麗に修理して磨いて、また勤務中に送り届けてあげる…そんなことができたらお互いにハッピーになれないか??それが、発想の原点。靴修理といえば、駅にあるミスターミニットが有名。男性客はあまりいない。女性客が中心なのが現状。なのに…なぜ店舗名がミスター?まずそこからおかしい。これは想像するに、かつてモーレツに働いていた団塊の世代の男たちに向けて、成長してきた痕跡。でも、もう今は時代が違う。
東京で一番忙しいと言われる渋谷駅の中にあるミスターミニット渋谷店に見学に行ってみました。いつも5人くらい並んで丸椅子に座って順番を待っている。全員女性。ふーん。私には、人前でさらし者になっているように見えました。急遽、並んでいるおねえさん達にインタビューしていきました。ちょっと勇気が必要でしたが。
いつもココ、来るんですか?「二ヶ月に一回くらい」恥ずかしくないですか?「ちょっと恥ずかしいです」なんか困ったことないですか?「皆、考えてることが一緒なのか、空いてると思って来たら、その日に限って並んでる。モ~って感じ。」他には?「そのスリッパ…誰が履いたかわからないのを履くのはいや。水虫のオヤジが履いてたらと思ったら嫌だし…だから履かないでブラブラさせてます。」他には?「待ってる時間が勿体無い。持って来るのも面倒」皆、不満はあるんだー。なのになぜここを使うの?「だって、他にはないもの…」
というものでした。
これはいただき!です。靴修理と靴磨きのデリバリーをやれば面白い。その名前は『靴急便サービス』もう、一気に企画が核融合です。朝、事務所に取りに行き、夕方に返却。企画の大筋は決まりました。事業創造って、資金やアイデアはとても大事。しかし、もっと大切なものがあります。それは勇気と、体力です。世の中に絶対なんてものはない。やってみなければ、何も始まらない。
現状の不便の解決は一番の基本です。でも、これからやって来る未来も少しは取り入れよう。これから何がやって来る?私は、それを「スマホ」としました。これから全てスマホに始まりスマホで完結の時代がくる。日本が一番出遅れた分野です。日本が誰よりも得意なはずの世界で、出遅れた分野です。スマホでオーダーして決済してもらいます。お客様は女性。女性の靴修理と靴磨き専門です。

 

メニューは靴修理と靴磨きなら種類は限定されます。回収に行く都合上、エリアを限定しました。東京駅周辺としました。特に丸の内。郵便番号は〒100-0005です。スマホのホームページから郵便番号を入力すると回収エリアかどうか分かります。次に勤務先等の会員登録をしてもらいます。そしてオーダー画面に変わります。
靴のタイプ、修理箇所、サービスメニューを選んでタップ。回収希望日時をタップ。オーダーボタンをタップ。これで予約完了。料金はカード決済。予約の段階では仮決済です。修理後お届けして本決済となります。次回からは靴コード番号と修理箇所とオーダーボタンのタップだけで全て完了です。一度でも修理した靴は登録されコード番号がつけられます。これでシステムは出来上がりました。今度は、誰が回収に行くか?お客様は女性なので、男性は嫌がれるだろう。回収も女性の方が安心だろうと女性コンシェルジュがオフィスに回収に行くことにしました。可愛い女性に回収に行ってもらいたいのですが、アルバイトの募集で苦戦です。私は女優さんやタレントさんに手伝って欲しかったので、彼女達の求人を始めました。そのためにある方法を思いつきました。通常のインターネット求人広告を使ったのですが、1つだけ他にはない日本で初めての仕掛けを付けました。他にはない求人の条件です。「オーディション優先」と一行記載したのです。女優さんの卵達は頻繁に舞台やテレビや映画などのオーディションを受けます。このオーディションはいつあるか分からないので、そのオーディションを受験するには仕事を休まないといけない。だから定職に就けない。しかも、前日とか当日にお休みの連絡をアルバイト先に言わなければならず、もう普通の仕事には就けません。これが彼女達の最大の悩みなのです。オーディション優先。仕事よりオーディションを優先してもOKです。そんな時は、アルバイトの中で空いている他の人と調整してくれればOKです。という項目を付けたのです。やがて応募者が殺到します。「本当にオーディション優先してもいいんですか?信じられません。そんな職場はここだけです。絶対に辞めません。」その結果、目論見通り美人ばかりの職場になります。口コミは広がり、求人広告はいらなくなりました。営業は、チラシをまいたり、新聞の取材をしてもらったり、DMを送ったり色々やりました。少しずつオーダーが入ってくるようになりました。誰かが使えば職場内の口コミで広がります。どこまで回収に行けるか、それがすぐ分かるように、回収に行った景色を携帯で写メしてもらいホームページにアップして行きました。コンシェルジュの女性たちの日記のように。そこには私はノータッチで女性の視点に任せました。その写メを見れば、「あっ、うちの会社の近所も回収に来るんだ!」と分かってくれます。しかし、なかなかオーダーが大きく伸びません。緩やかに上がっているのですか、急成長とは言えません。原因は色々ありました。
①靴の修理ごときで個人情報を登録するのは嫌
②慣れないスマホでのオーダーの仕方が分からない。
③スマホを持っていない。
でした。
当時のスマホの普及率は20%程度。まだまだガラケー中心の時代でした。それではと、パソコンでもオーダーできるようにしたら、会社のパソコンは私用には使えない。丸の内企業ですので、その監視が厳しくオーダーにはなかなか繋がりませんでした。また、丸の内の高層ビルはセキュリティーが厳しくビルに入れないという事態も発生しました。一人、靴職人を雇っていたのですが、暇そうにしています。困った。仕方なく、普通通りお店でお客を待つ修理店も併設しました。店舗は中央区京橋にある小さなビルの9階の事務所にオープンしました。普通なら1階の人通りのある場所に店舗を出店するのが良いのでしょうが、家賃の安い9階に事務所があったので仕方ありません。結局そこで靴の修理店舗を始めることになります。小さなエレベーターで9階まで上がらなければなりません。しかし、このことが、新たな市場のすき間を見つけるきっかけとなるのでした。
【続く】



 

 

 

 

 

 

 

《参考資料》

【平均給与】33歳OLの平均年収は、294~299万円
年齢別 男性/女性〔万円〕
19歳以下 161/126
20~24歳 270/231
25~29歳 379/294
30~34歳 461/299
35~39歳 555/294
40~44歳 629/280
45~49歳 656/278
50~54歳 662/266
55~59歳 634/264
60歳以上 456/234
平均 539/271
(平成18年 国税庁「年齢階層別の平均給与」より)
この20年給与は上がっていない。
【OLの支出内訳(33歳)
年収299万円/手取月給20万円
貯蓄;約330万円
40,000 家賃
10,000 水道光熱費
35,000 食費・日用品
20,000 交際費
12,000 ケータイ代
15,000 洋服・化粧品代
15,000 交通費
5,000 保険
10,000 趣味
5,000 医療費
30,000 貯金
20,000 なんやかんやその他
全部で19万7000円(+α)
クリーニングの必要なものは買わない。